ダフト・パンクの久しぶりのオリジナル・アルバム「ランダム・アクセス・メモリーズ」です。ライヴやサントラがありましたからそれほど時間がたった気はしませんが、オリジナル・アルバムとしては「原点回帰」から実に8年ぶり、世間はこれを待っていたのでした。

 本作品は英米を含む世界20か国以上でチャート1位を記録しています。日本でもオリコン・チャートで3位、ゴールド・ディスクに輝いています。さらにグラミー賞では見事に最優秀アルバムを獲得、シングル「ゲット・ラッキー」もレコード・オブ・ザ・イヤーになりました。

 ダフト・パンクにグラミー賞は似合わないなと思ったのですが、世間は何やらかまびすしかったのを覚えています。過去3枚あるオリジナル・アルバムの受け取られ方とは次元が違う世間の扱いにずいぶんと驚いたものです。ダフト・パンクの二人は平気だったようですが。

 本作品はこれまでとは何が違うといって、エレクトロニクスの使い方が違います。驚いたことに本作品はほとんどが生の演奏でできています。あのエレクトロニクス・デュオが多くのゲストを招いて堂々たる生演奏のアルバムを作り上げたわけですから驚きです。

 生演奏でアルバムを作るアイデアを思い付いた二人は、コアとなるミュージシャンを集めます。ドラムのオマー・ハキムやジョン・ロビンソン、ベースのネイサン・イースト、ギターのポール・ジャクソン・ジュニア、スティール・ギターのグレッグ・レイスなどなど。

 面白いことにこれらのミュージシャンは1970年代や80年代のスーパースターたちを支えたセッション・ミュージシャンです。ダフト・パンクの二人はこの当時の音楽が大好きなようで、狙い通り、本作品からは当時のサウンドのエッセンスを感じることができます。

 このメンバーによる演奏をベースに豪華なゲストがフィーチャーされました。この人選がとにかく凄いです。シックのナイル・ロジャース、ディスコの巨人ジョルジョ・モロダー、こちらはポップ巨人ポール・ウィリアムス。この三人の名前は思わず二度見してしまいました。

 もちろん、「ゲット・ラッキー」にはもはや形容不能のスター、ファレル・ウィリアムスやストロークスのジュリアン・カサブランカス、DJファルコン、サイケ・ロックのアニマル・コレクティブのパンダ・ベア、チリー・ゴンザレスと同時代に活躍するアーティストも参加しています。

 本作品にはコーラス隊やオーケストラも参加しており、代わりと言ってはなんですが、打ち込みは2曲、サンプリングは1曲のみの使用となっています。これまでのダフト・パンクのサウンドとは異なるはずなのですが、とてもダフト・パンクらしく感じます。

 考えてみればこの豪華ゲストはある意味で贅沢なサンプリング素材であり、打ち込みプログラムであるのでしょう。各自の奏でるサウンドは私たちがよく知っているそれぞれのサウンドです。あらかじめ想定してダフト・パンクの描く世界にはめ込むことが可能です。

 そんな超豪華素材を組み合わせてサウンドを作り上げるダフト・パンクの視線は愛に満ち溢れているように思います。尊敬する大好きなアーティストへのリスペクトが詰まっているサウンドが素晴らしくないわけはありません。本当に豪華な豪華なアルバムです。

Random Access Memories / Daft Punk (2013 Columbia)



Tracks:
01. Give Life Back To Music
02. The Game Of Love
03. Giorgio By Moroder
04. Within
05. Instant Crush
06. Lose Yourself To Dance
07. Touch
08. Get Lucky
09. Beyond
10. Motherboard
11. Fragments Of Time
19. Doin' It Right
13. Contact
(bonus)
14. Horizon

Personnel:
Thomas Bangalter
Guy-Manuel de Homem-Christo
***
Starring:
Nile Rodgers : guitar
Giorgio Moroder : voice
Chilly Gonzales : piano, keyboards
Julian Casablancas : vocal, guitar
Pharrell Williams : vocal
Paul Williams : vocal
Todd Edwards : vocal
Panda Bear : vocal
DJ Falcon : synthesizer
Musicians
Greg Leisz : pedal steel guitar, lap steel guitar
Chris Caswell : keyboards
Paul Jackson, Jr. : guitar
Nathan East : bass
James Genus : bass
John "J.R." Robinson : drums
Omar Hakim : drums, percussion
Quinn : percussion, drums
Thomas Bloch : ondes Martenot, cristal baschet
Doublas Walter : orchestra conductor
Angie Jaree : choir conductor