チック・チック・チックは1995年に結成されていますから、4枚目のスタジオ・アルバムである本作品「ストレンジ・ウェザー・イズント・イット?」が発表された2010年には結成15年を迎え、もはやベテランの域に達してきています。いつまでも若いと言っていると怒られます。

 彼らは積極的にライヴを行うバンドで、日本の音楽フェスにも何度も参加しており、2010年には三度目のフジロックにて初めてヘッド・ライナーを務めています。フジロック・フェスティバルは今や世界に冠たるイベントになりました。感慨深いです。

 このバンドの名前は本来エクスクラメーションマークを三つ並べただけです。これではウェブで検索も出来ず、何から何まで不便なわけで、日本ではチック・チック・チックと呼びならわされています。英語名はChkを三つ並べた通称で知られます。

 彼らはダンス・パンクなどと分類されることが多いですが、この名前がまずパンクを主張しています。ただ、それほど深い考えでつけたわけではなさそうで、反抗であるとか破壊であるとかそういう姿勢ではないところが、またちんぴら感があってパンクな感じです。

 もう一方のダンスですけれども、ここは本作品がワープ・レコードから発表されている事実を指摘すれば十分でしょう。クラブ・ミュージックに長けたワープですから、彼らが普通のロック・バンドであればけして声をかけたりはしないでしょう。

 チック・チック・チックの作り出すサウンドは、そのダンス・パンクの名前の通り、まずはダンスとパンクの融合です。ただし、本作品など、エレクトロなダンスはともかくパンクの方は、パンクというよりジャム・バンド的な感触です。生演奏の部分も本来的にダンス色が濃い。

 ロックとダンスの融合といえばストーン・ローゼズなどを思い起こします。しかし、今やロックよりもダンスが主流ですから、ローゼズがロックにダンスを取り入れたのに対して、チック・チック・チックなどはダンスにロックを取り入れた感覚です。時代は変りました。

 この作品は「享楽的、攻撃的、幻惑的、弾力的、特異的、圧倒的、パンク、ディスコ、ファンク、そして最高のポップス」であると発売元は説明しています。チック・チック・チックの「バンド史上、最もポップでスタイリッシュ、ファンキーでダンサブルな超大作」です。

 こうして形容詞を並べたくなる気持ちもよく分かります。これまで彼らはライヴ・バンドののりを重視したアルバムを作ってきましたが、本作品ではスタジオ・ワークを徹底することで完成度の高いアルバムを目指したとのことです。煽り文句も作りこむ必要があるというものです。

 共同プロデューサーにはLCDサウンドシステムなどで知られるレーベルDFAのインハウス・エンジニアのエリック・ブルーチェックが迎えられています。このことでよりダンス的に洗練されたプロダクションが可能になった模様です。確かに洗練された作品になっています。

 聴く前にはもっとパンク的なサウンドかと思っていましたが、ワープ・レコードらしい「スタイリッシュでグルーヴィーなアンサンブル」による堂々たるエレクトロでファンクなサウンドに驚きました。まさに「2010年最狂のダンス・ロック・レコード」です!!!

Strange Weather, Isn't It / !!! (2010 Warp)



Tracks:
01. AM/FM
02. The Most Certain Sure
03. Wannagain Wannagain
04. Jamie, My Intentions Are Bass
05. Steady As The Sidewalk Cracks
06. Hollow
07. Jump Back
08. Even Judas Gave Jesus A Kiss
09. The Hammer
(bonus)
10. Made Of Money

Personnel:
Nic Offer : vocal, keyboards
Mario Andreon I : guitar, bass
Tyler Pope : guitar, bass
Allan Wilson : keyboards, sax, percussion
Daniel Gorman : keyboards
Paul Quattrone : drums
Shannon Funchess : vocal
Guy Licatta : drums
Jerry Fuchs : drums
Justin Vander Volgen : guitar
Olivia Mori : vocal
Ifeoluwa Babalola : vocal
Caito-Sanchez : percussion
Jason Disu : horns
Nick Roseboro : horns
Caleb Burhaus : violin
Yuki Numata : violin
Nadia Sirota : viola
Clarice Jensen : cello