当初から予定されていたのかどうかは定かではありませんが、ツトム・ヤマシタのGOプロジェクトはアルバムの成功を受けて、一連のライヴを行いました。本作品は1976年6月12日にパリのパレ・デ・スポートにて行われたステージを録音したライヴ・アルバムです。

 「ゴー・ライヴ・フロム・パリ」とシンプルに題されたアルバムは、まずもってジャケットが粋です。しばらく後に「飛んでイスタンブール」で日本人の憧れとなるジダンの箱が描かれたジャケットは、アルバム・ジャケットを数多く手掛けるアーティスト、トニー・ライトの作品です。

 ライトの代表作はトラフィックの「ロウ・スパーク・オブ・ハイ・ヒールド・ボーイズ」でこれは現代美術館のコレクション入りしています。その他にはボブ・マーリーの「エクソダス」やスーサイドのファースト、B-52ズのファーストなど名作が目白押しです。

 そんな名ジャケットに包まれたアルバムは一連の物語となっているスタジオ・アルバムを見事に再現しています。ただし、曲順はヤマシタが当初考えていた通り、スタジオ作のB面から先に演奏され、続いてA面へとつながっていきます。これが正しい物語です。

 スタジオ盤はA面の方がキャッチーだと考えたレコード会社の差し金で順番が逆になったそうです。LPであればB面から先にかければよいだけなので実害はさほどありませんが、CDとなるとオリジナル曲順での再生は手間がかかります。何とも面倒な話でした。

 ステージに立ったメンバーは、ヤマシタ、スティーヴ・ウィンウッド、マイケル・シュリーヴ、クラウス・シュルツェ、アル・ディメオラとスタジオ盤の主要メンバーは勢ぞろいしています。ただし、ベースはロスコ・ジーからジェローム・リムソンに代わっています。

 ギターのパット・スロールとリムソンはいずれもまだ駆け出しのミュージシャンでしたが、この作品を機に、シュリーヴを中心にオートマティック・マンを結成するなどしており、その後も多方面で活躍しています。ヤマシタの人を見る目は確かです。

 ステージはスペース・オペラの演奏ですから、基本的にはスタジオ作品に忠実な演奏で出来上がっています。しかし、もちろんこれはライヴですから、全く同じということはなく、そもそも演奏時間が5割増しと大幅に増加しています。その結果、LPだと2枚組になりました。

 各楽器の名手ばかりですから、それぞれの見せ場がたっぷりと用意されています。名曲「クロッシング・ザ・ライン」などはアカペラかと思わせるようなウィンウッドのボーカルで始まり、ディメオラの火の出るようなギターが縦横無尽に駆け回ります。かっこいいです。

 興味津々だったのはやはりシュルツェの演奏です。ロック・バンドの一員としてのシュルツェの演奏というものが想像できないでいたのですが、まるで違和感なく、時には前面に出てきてがんがん演奏しています。余計な先入観をもってはいけませんでした。

 ライヴ盤は演奏時間とともにエモーションも5割増しとなっているように感じます。とても一緒に演奏しそうにないクールなアーティストたちが、見事にスペース・オペラを熱く完走するさまはとにかく感動的です。短命に終わる宿命だったとはいえ、もう少し続けてほしかったです。

Go... Live From Paris / Stomu Yamashta (1976 Island)



Tracks:
01. Space Song
02. Carnival
03. Wind Spin
04. Ghost Machine
05. Surf Spin
06. Time Is Here
07. Winner / Loser
08. Solitude
09. Nature
10. Air Voice
11. Crossing The Line
12. Man Of Leo
13. Stellar
14. Space Requiem

Personnel:
Stomu Yamashta : percussion, piano
Steve Winwood : vocal, keyboards
Michael Shrieve : drums
Klaus Schulze : synthesizer
Al Dimeola : guitar
Jerome Rimson : bass
Pat Thrall : guitar
Brother James : congas
Karen Freidman : vocal