モンドやラウンジなどと呼ばれる音楽ジャンルが一周回っておしゃれになったのは1990年代のことではなかったかと思うのですがどうでしょう。もちろん音楽自体は1950年代くらいからあったのですが、若者の聴く音楽ではないとされていました。

 1984年に発表されたウォーター・メロン・グループの「クール・ミュージック」はラウンジ・ミュージックを取り入れた快作です。世間の動きに先駆けていたわけで、その目の付け所はさすがというしかありません。お洒落な人々でした。

 それもそのはず、ウォーター・メロンはテクノ御三家の中でもダントツにファッショナブルだったプラスティックスの中西俊夫が中心になって結成されたユニットです。もう一人の中心はプロとしては日本初のスティールドラム奏者、ヤン富田です。

 ここに富田とともにタイニー・エキゾチカ・ボーイズなるバンドを組んでいた高橋誠一、後にシンプリー・レッドに加入する屋敷豪太、これまた後にパール兄弟に参加するベーシストのバカボン鈴木などを加えた布陣で、本作品が制作されました。

 ウォーター・メロンはメロンと並行して活動しており、中西はウォーター・メロンではエキゾチックなサウンドを追及するものと決めていた模様です。両者はスネークマンショーの「ピテカントロプスの逆襲」にて共存して、その違いを際立たせています。

 ウォーター・メロンは企画ものっぽい感じでもあり、スネークマンショーの同作品と本作品を発表しただけで自然に消滅していったようです。この時代の最先端を突っ走っていた中西らの活動は自由自在でした。本当にかっこよくて当時からほれぼれしていました。

 本作品は基本的にはラウンジないしモンド、さらにはエキゾチック・ミュージックと呼ばれる音楽のカバー集です。オリジナル曲も2曲ありますが、カバー曲と同居してまるで違和感がありません。徹底してエキゾを追及したアルバムとなっています。

 冒頭にエキゾチック・ミュージックといえばこの人、レス・バクスターが作曲して、マーティン・デニーがレパートリーにした「クワイエット・ビレッジ」であることが全てを物語ります。1950年代に活躍したバクスターはもう一曲「ジャングル・フラワー」が演奏されています。

 他の曲はホーギー・カーマイケルの「ホンコン・ブルース」、エディー・ランドとタヒチアンの「ティアレ」、マノス・ハジダキスのサントラ「ネバー・オン・サンデー」、ミュージカルのための「オン・ナ・クリアー・デイ」、ジミー・ヴァン・ヒューゼンの「ムーンフラワー」などなど。

 いずれも1960年代以前のいかにもな曲ばかりで、そこにオリジナル2曲と同世代のエキゾチック男ジョナサン・リッチマンの曲が加わります。いずれもしっかりとラウンジしており、そのなりきりぶりは素晴らしいです。下品になる寸前で踏みとどまるゴージャスさ。

 世の中にこういう音楽があるのはもちろん知ってはいましたが、それをこんなにかっこよく生まれ変わらせることができるのだと目から鱗が落ちたのは私だけではないはずです。ウォーターメロンのこの作品によって音楽の視界が一段広まったのでした。

Cool Music / Water Melon Group (1984 Alfa)



Songs:
01. Quiet Village
02. Hong Kong Blues
03. Tiare
04. Jungle Flower
05. Egyptian Reggae
06. Never On Sunday
07. On A Clear Day
08. Sexanova
09. Moon Flower
10. The Gate Of Japonesia
(bonus)
11. Fly Me To The Moon
12. Il Casanova

Personnel:
中西俊夫
ヤン富田 : steel pan
高橋誠一 : keyboards
バカボン鈴木 : bass
屋敷豪太 : drums
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MC4 : ignition gillo, voice bass drum
T. Umeno
Chica Sato
T. Kobayashi
Stephane