ボブ・マーリーは1981年5月にわずか35年余りの生涯を閉じました。あまりに早すぎる死ではありますが、短い生涯に残した音楽の数々は永遠の命を得ています。そのことは死後に編まれたベスト盤である本作「レジェンド」の驚異的な売り上げが証明しています。

 1984年5月にアイランド・レコードから発売された「レジェンド」は公式サイトによれば米国だけで1400万枚を売り上げ、世界全体では2500万枚という特大ヒットになっています。しかもその持続力がものすごいです。延々と売れ続けています。

 英国では1000週を超えてチャート・インしており、クイーンとアバのベスト盤に次ぐ3番目の長さです。米国では700週を超える数字ですが、これを凌駕するのはピンク・フロイドの「狂気」だけです。まさにモンスター・アルバムと言ってよいでしょう。

 ボブ・マーリーは1960年代の始めにソロ・アーティストとしてシングル曲をリリースしていますが、本格的にジャマイカのヒット・チャートに登場するのは1964年、ピーター・トッシュ、バニー・ウェイラーらと結成したザ・ウェイラーズとしてのことです。

 その後、数多くのヒットを放つ人気グループとなりますが、その道行は平坦なものではありませんでした。その地平を一変させたのが1972年のアイランド・レコードとの契約です。これを機にボブ・マーリーとウェイラーズはジャマイカを超えて世界的なバンドになっていきます。

 本作品はウェイラーズの活動のうちアイランド時代の代表曲を集めたベスト・アルバムです。具体的にはアイランド・デビューとなる「キャッチ・ア・ファイヤー」からマーリーの死後に発表された最後のスタジオ・アルバム「コンフロンテイション」までが網羅されています。

 シングル曲ばかりが選ばれているわけではないこともあり、過激な政治的主張の曲が少ないとか選曲に関してさまざまな意見があるところですが、いわゆる代表曲は網羅しており、私は丁寧な選曲だと思います。追悼盤としての役割は十分に果たしています。

 「イズ・ディス・ラヴ」に始まり、ライヴの方の「ノー・ウーマン・ノー・クライ」、「アイ・ショット・ザ・シェリフ」に「ワン・ラヴ」、「ゲット・アップ・スタンド・アップ」、「エクソダス」などなど。私としてはほぼ弾き語りの「リデンプション・ソング」の収録に特に編集者の愛を感じます。

 欧米中心主義的であまり愉快な話ではありませんが、やはりアイランド期のマーリーがレゲエを世界に広めるに際して大きな役割を果たしたことは疑いありません。日本では独自にレゲエも紹介されていましたけれども、私は結局欧米経由でレゲエを知りましたし。

 そのためマーリーはレゲエ純粋主義者からはやや斜めに見られる傾向がありましたけれども、それは狭量というものです。今やレゲエはエキゾチックな音楽などではなく、堂々たるポピュラー音楽のメインストリームです。マーリーが扉を大きく開いたのです。

 こうして代表曲を集めたアルバムを聴いていると、改めてその力強いサウンドに聴き惚れるとともに自然と感謝の念が湧いてきます。アイランド期に限ってもさまざまに変化するボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのサウンドを聴きながら合掌したいと思います。

Legend / Bob Marley and the Wailers (1984 Island)



Songs:
01. Is This Love
02. No Woman No Cry (live)
03. Could You Be Loved
04. Three Little Birds 三羽の小鳥
05. Buffalo Soldier
06. Get Up Stand Up
07. Stir It Up
08. Easy Skanking (bonus)
09. One Love / People Get Ready
10. I Shot The Sheriff
11. Waiting In Vain
12. Redemption Song
13. Satisfy My Soul
14. Exodus
15. Jamming
16. Punky Reggae Party (bonus)

Personnel:
Bob Marley : vocal, guitar
Peter Mackintosh : piano, organ, guitar, vocal
Bunny Livingston : congas, bongos, vocal
Joe Higgs : percussion
Aston "Family Man" Barrett : bass, percussion
Carlton (Carlie) Barrett : drums, percussion
Al Anderson : guitar
Julian (Junior) Marvin : guitr, chorus
Tyrone Downie : keyboards, percussion, chorus
Alvin "Seeco" Patterson : percussion
Rita Marley, Marcia Griffiths, Judy Mowatt : chorus
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Earl "Way" Lindo : keyboards, percussion, chorus
Earl "Chinna" Smith : guitar, percussion
Donald Kinsey : guitar
Touter : piano, organ