「”ミーハー・ファンキー”タンゴ・ヨーロッパ シングル曲『桃郷シンデレラ』を含む11曲を収録した名作が、令和に復刻!」というわけで、タンゴ・ヨーロッパが1984年に発表したセカンド・アルバムにして最後のアルバム「フラストレーション」です。

 タンゴ・ヨーロッパは1981年にヤマハ主催のコンテスト、EASTWESTの関東甲信越大会のレディス部門で最優秀グランプリを獲得したことがきっかけでメジャー・デビューしています。このコンテストは数多くのアーティストを輩出した当時屈指のコンテストでした。

 同コンテストから出た最も有名なバンドはサザン・オールスターズでしょう。1981年にはシニア部門最優秀が爆風銃、優秀グループがスーパースランプ、後に合体して爆風スランプです。またレディス部門でタンゴ・ヨーロッパに次ぐ次点優秀グループはShow-yaでした。

 時代的にはニュー・ウェイブ時代でしたから、ゼルダや少年ナイフやらガールズ・バンドも百花繚乱の様相を呈していました。その中にあってタンゴ・ヨーロッパはヤマハ出身ということで王道派とニュー・ウェイブ派の両方の要素を兼ね備えた特異なガールズ・バンドでした。

 メンバーは後にソロで活躍するシンガーの斉藤美和子、ベースの坂口かおる、ギターの是沢淳子、ドラムの石田美紀子、キーボードの塚越優香の5人で、デビュー当時は大学生もいたそうですが、活動期間は3年半程度とかなり短命のバンドでした。

 本作品はデビュー作「乙女の純情」の翌年に発表されました。この作品ではほとんどの楽曲が自作曲で占められ、編曲も自身です。カバー曲も2曲ありますが、サザンの「かしの樹の下で」とクレージーキャッツの「ホンダラ行進曲」と、明らかに本人たちの選曲です。

 やりたいことをやりたいようにやった結果がこのアルバムということでしょう。大変自由度が高いです。メジャー方面にもアングラ方面にもこだわりがない。斉藤は、「『なんか面白いけどよくわからない』部分があ」るバンドだと評しています。

 彼女たちは、「その頃の東京にはいくつかの音楽シーンやいわゆる流行のサウンドがあったけれど、そのどれにもいろんな意味で『カチッとおさまる』ことがなかった」バンドでした。そういうバンドは売れにくいですけれども、長く愛好されます。彼女たちもそうでしょう。

 まずはこの演奏が素晴らしいです。ジャストな感覚のリズムがとにかく素晴らしいですし、隙間を空けた編曲もかっこいい。デビューして2年でこれですから、メンバーが解散後もさまざまなバンドで活躍するのも分かります。ミーハー・ファンキーは本物のファンキーでした。

 一方で歌詞は1980年代前半、サブカル時代ならではのジェンダー観とおふざけ感が満載なので、やや今の時代に聴くと厳しいところがあります。パロディーになり切れていない「めざせ結婚」とか。なるべく気にしないように斉藤のアイドル的なボーカルを楽しみましょう。

 シングルカットもされた「桃郷シンデレラ」を始め佳曲は多いですし、何よりもさまざまなスタイルの曲を自然にこなせる演奏力も素晴らしい。短命に終わったのが本当に残念なバンドです。地道に長く活動してほしかった。まあメンバーはずっと活躍するわけですが。 

Frustration / Tango Europe (1984 キング)



Songs:
01. ぺんぎんさんまで ひとっとび
02. ごめんねBoy
03. ああ、発車オーライ
04. PaPa泣かないで
05. ホンダラ行進曲
06. かしの樹の下で
07. てぇーへんだ!てぇーへんだ!
08. おじさんはWANA
09. めざせ結婚
10. アーモンドの月
11. 桃郷シンデレラ

Personnel:
斉藤美和子 : vocal, Sax
坂口かおる : bass, chorus
是沢淳子 : guitar, chorus, keyboards
石田美紀子 : drums, chorus, percussion
塚越優香 : chorus, keyboards