ソフトウェアはドイツの二人組ユニットです。活動していたのは1983年から2002年までで、本作品は彼らにとって5枚目のアルバムとなる「デジタル・ダンス」です。彼らの音楽は活動していた当時はニュー・エイジに分類されていました。

 1980年代後半はニュー・エイジも佳境に入り、音楽の世界にも進出してきていました。その影響は日本にも当然及んでいます。本作品がキング・レコードの「Mind wave youとぴあ」シリーズの一つとして日本でも発売されていたといえばその広がりも分かるというものです。

 ソフトウェアを結成した二人、ピーター・メルゲナーとミヒャエル・ワイザーは電子音楽を中心とするマルチメディアでの創作活動を行っていきます。その際、コンピューターがクリエイティブなアートにどのように貢献できるかということに徹底して注目したのでした。

 ワイザーはもともとクラウス・シュルツェなどとも交流が深く、シュルツェが創設したイノヴェイティヴ・コミュニケーションズの運営にプロデューサーとして加わるなど、その世界では知れた名前でした。そこにメルゲナーが電話をかけてきてデュオ結成に至ったという次第です。

 ソフトウェアの活躍の場は当然イノヴェイティヴ・コミュニケーションズとなります。ジャーマン・プログレの空気を存分に呼吸した二人によって同レーベルに残された作品群はいずれもシンセサイザー/シーケンサー操作を中心に据えた電子音楽の王道を行っています。

 本作品は一部にゲスト・ミュージシャンによるサックスやフルート、ギターなどが加わっていますけれども、基本的にはシンセによるサウンド・スケッチになっています。いかにも1980年代らしいシンセのサウンドが何とも懐かしくて気持ちのよいポップさがいいです。

 この当時、こうしたシンセ音楽はロックに分類されるプログレと瞑想などのための実用音楽に分類されるニューエイジに分かれており、ロックの聴衆は後者には手を出さなかったように思います。アーティスト不在の勝手な分類でしたが、なぜか真剣に捉えていたものです。

 冷静に聴くと、両者に際立った相違があるわけではありません。本作品などは当時ニューエイジとされていたので私はまるでスルーしていましたけれども、改めて聴いてみるとその気持ちよさに悶絶してしまいそうです。特にスピリチュアルな主張があるわけでもありませんし。

 ニュー・エイジの復権にはヴェイパーウェイヴの登場が関わっています。本作品は「30年の時を経て再評価されるニューエイジの秘宝」であり、「原型・オブ・ヴェイパーウェイヴ」としてその界隈で大変盛り上がったことから再発盤が日本でも発売されるに至りました。

 そもそも再発したのはヴェイパーウェイヴの重要なレーベル、100%エレクトロニカです。自身もアーティストであるオーナーのジョージ・クラントンがとりわけ愛聴していたそうですから、シーンへの影響力も大きい。確かにヴェイパーウェイヴと言われても納得できる所以です。

 ヴェイパーウェイヴとされる音楽群は目から鱗の楽しみをここへきて教えてくれます。当時は全く無視していた音楽ですけれども、何をそんなに熱くなって拒否していたのだろうと不思議に思います。メインストリームの音楽とはまるで違いますが、これもまた音楽。楽しいです。

Digital-Dance / Software (1988 Innovative Communication)



Songs:
01. Oceans Breath 大海の息吹
02. Magnificent Shore 壮大なる海岸
03. Waving Voices 手を振る声
04. Island Sunrise 島の日の出
05. Magic Beach 魔法の浜辺
06. Sea Gulls Audience 観客はカモメ
07. Digital-Dance
(bonus)
08. Magicians Song 魔法使いのうた
09. Percussion Island パーカッション島

Personnel:
Peter Mergener
Michael Weisser
***
Toni Schneider : flute, sax
Holger Marquenie : guitar
Wolly Schneider : keyboards