プルマナシ・ヨガマヤはインドの人ではありません。なんとバルト三国の一つリトアニアのアーティストです。したがって、この名前は本名ではありません。ここで本名をご紹介したいところですが、リトアニア語の名前なので読めません。誰か教えてください。

 彼女は学校を卒業するとすぐに、リトアニアの首都ヴィリニュスで音楽活動を始めています。そこで彼女は「mmpsuやKurakといったエレクトロニカ・グループに参加するシンガーであり、ギター弾き語りのSSWとして本名で活動して」いました。

 プルマナシ・ヨガマヤはインドの聖典ヴェーダに出てくる「魂と精神世界を結びつける女神」の名前です。なぜそれが彼女の名前になったのかといえば、彼女がヨーガの一種であるバクティ・ヨーガの師匠に弟子入りして修行しているからです。

 「この女神の名前は私の先生のように、私を守り、導いてくれます。そして、愛について歌う音楽はとてもパワフルです。だから私はこの特別な名前でラブソングを歌うのです」。背筋がぴんと伸びる説明です。筋金入りのインド哲学信奉者です。

 本作品はプルマナシ・ヨガマヤ名義で発表した初めてのソロ・アルバムです。タイトルは「オー・マイ・ビラヴィッド」です。インドでは神様に捧げるアルバムが最も広く売り場を占拠していましたから、このタイトルには大変懐かしくなりました。インドの王道です。

 本作品で彼女は一部ヒンディー語で歌っています。インドの伝統的なスピリチュアル・ソングであるバジャンからの引用です。美しい歌声で祈りを捧げるように歌われるバジャンはしっかりと本場の空気を醸し出しています。リトアニアからインドの風が吹いてきます。

 一方、彼女はバルト海のルーツを忘れているわけではありません。大半は多くの人に届くように英語でも歌っていますけれども、リトアニア語でもしっかりと歌っています。初めて聴くリトアニア・ソングは歌自体が楽器のようでとても新鮮に聴こえます。

 ヨガマヤは曲作りからボーカル、キーボード、ギター、バイオリン、ベースにエレクトロニクスと八面六臂の大活躍です。支えるミュージシャンは総勢9名がクレジットされており、いずれも基本的にはアコースティックな楽器を演奏しています。

 ヨガマヤ自身はさらに録音やミキシングも担当しており、一人で制作過程をすべて掌握するほぼ完全なソロ・アルバムです。スピリチュアルが湧き上がってくるアンビエントなサウンドはまさに彼女が意図したものでしょう。インドの宗教歌のバルチック版のようです。

 とはいえ、もちろんクラブ・ミュージック以降のサウンドになっているわけで、日本ではヴァージニア・アストレイがジェイムス・ブレイクに出会ったようなサウンドとして知られています。彼女自身もブレイクは身近な存在だそうで、確かに相通じるところがあります。

 大そう落ち着いたサウンドです。彼女自身も「このアルバムは実験的なものではありませんでした」と発言しており、心の趣くままに人生の出会いへの感謝を綴っていったことがわかります。バクティ・ヨーガの力もあるのでしょう、宇宙との合一、梵我一如を感じます。

参照:Purnamasi Yogamaya インタビュー(OTOTSU)

Oh My Beloved / Purnamasi Yogamaya (2020 Madhuri Kunja)



Songs:
01. My Heart
02. Could I Sing You A Song
03. Šventosios Upės (The Holy Rivers)
04. Sweet Love
05. Gopinath
06. Small
07. Om Namo

Personnel:
Purnamasi Yogamaya (Eglė Sirvydytė) : vocal, piano, synths, guitar, violin, bass, electronics
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Augustas Baronas : drums
Gediminas Svilas : double bass, electric bass
Paulius Adomėnas : bass
Remigijus Rančys : sax
Aurimas Rimeikis : trumpet
Elena Marcinkevičiūtė : violin
Ugnė Gaučaitė : viola
Gaudas Paulius Krištaponis : cello
Kornelija Giedrikaitė : cello