バッド・カンパニーが、大ヒットした「ディソレーション・エンジェル」から3年を経て発表した6枚目のスタジオ・アルバム「ラフ・ダイアモンド」です。今となっては長くもありませんが、この当時は彼らのような人気バンドが3年ものブランクを空けるのは珍しいことでした。

 といいますか、本作品が発表された時には「まだやっていたのか」と驚きました。日本ではあまりニュースも目にしませんでしたし、彼らの存在を忘れてしまっていました。この頃は新しいバンドがとにかくどんどん出てきていた時代でしたからなおさらです。

 ジャケットはいつものようにヒプノシスです。オリジナルはジャケットにダイヤモンド型の穴が空いており、そこを通して封入シートの絵がチラ見できる変形ジャケットになっていました。面白いジャケットですが、あまりヒプノシスらしくはありません。

 本作品は評論家陣からは酷評され、セールスもゴールドディスクに届かないという期待外れに終わりました。そして、何よりも本作品がバッド・カンパニーにとってのスワン・ソングになってしまい、オリジナル・メンバーでの最後のアルバムになってしまいました。

 何だか良からぬ話ばかり聞こえてきますけれども、そこは腐ってもバドカンです。そんなにひどいアルバムのわけはありません。セールスにしたところで、一応全英15位、全米26位と普通のバンドであれば大よろこびの順位を記録しています。

 本作品には、前作のようなディスコ・ビートを取り入れた曲やアコースティック・ギターを前面にたてたカントリーっぽい曲などはありません。その意味ではシンプルでストレートなロック・アルバムになっています。それぞれの楽曲もこじんまりとまとまっています。

 とはいえ、最初期のブルース全開とはならず、「ディソレーション・エンジェル」を通過した一皮むけたサウンドではあります。クレジットにはないもののピアノやシンセの使い方やビートの処理などは洗練のあとがくっきりと刻印されています。

 唯一のゲストであるメル・コリンズのファンキーなホーンなどもこの洗練の一翼を担っています。こうしたサウンドを受けて、ポール・ロジャースの歌声はかえって若返っていると騒がれたものです。老成した粘っこいボーカルがここではさらりと力強いです。

 本作品ではミック・ラルフスの提供した楽曲はわずか2曲となり、さらに3曲ではリード・ギターをロジャースに譲っています。どうやらそれらの曲では録音自体に参加していない模様です。ラルフスの代わりに曲の提供者となったのがボズ・バレルです。

 ロジャース色が強くなったとも言えるのですが、そこは稀代のリズム・セクションだけのことはあり、しっかりバンド・サウンドになっています。とはいえ、バンド内の人間関係はぎくしゃくしていたようで、結局、本作品を最後にバッド・カンパニーはいったん解散してしまいます。

 ロジャースは脱退の理由をバンドが生活のすべてを飲み込んでしまったからと説明しています。個人の生活を取り戻したい。「音楽は辞めない。バンドを辞める」。バンドはメンバーの総和以上のものなんですね。本作はバンドに作らされたアルバムなのかもしれません。

Rough Diamonds / Bad Company (1982 Swan Song)



Songs:
01. Electricland
02. Untie The Knot
03. Nuthin' On The TV
04. Painted Face
05. Kickdown
06. Ballad Of The Band
07. Cross Country Boy
08. Old Mexico
09. Downhill Ryder
10. Racetrack

Personnel:
Paul Rodgers : vocal, guitar
Mick Ralphs : guitar
Boz Burrell : bass
Simon Kirke : drums
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Mel Collins : horn