このジャケットには随分驚きました。ヒプノシスの制作だと聞けばなるほどなと思うわけですが、バッド・カンパニーのアルバムとしてはかなり違和感があります。ついでにいえばヒプノシスがこれまでのバドカン・ジャケットをほとんど手掛けたこと自体も驚きではあります。

 バッド・カンパニーの2年ぶりのアルバム「ディソレーション・エンジェル」、発表は1979年のことです。このアルバムは前作に引き続いて賛否両論を巻き起こしました。明らかにサウンドを変化させようという意図が感じられ、実際に変化が感じられます。

 1979年といえば、ニュー・ウェイヴとディスコが盛んだった時期です。シンプルでゴリゴリだったバッド・カンパニーも流行を無視することができなかったものと思われます。本作品ではシンセサイザーが活躍するようになりましたし、ディスコ風ビートもあらわれます。

 さらにカントリー・ミュージックの影響が表面に表れてきています。その象徴がその名も「オー・アトランタ」、ミック・ラルフスの作曲による曲で、サイモン・カークは「アトランタではいつも楽しんだ。この曲にはカントリーの影響を聴くことができると思う」と言っています。

 ついでにカークの言葉を借りれば西部劇の香りが高い「イーヴル・ウィンド」はポール・ロジャースの妄想の賜物だそうで、 「ポールは前世ではカウボーイか賞金稼ぎの一人だったんじゃないか」ということです。ボズ・バレルのベースがかっこいい曲です。

 「クレイジー・サークル」ではミック・ラルフスと思われるアコースティック・ギターが活躍しますし、ヒットした「ロックン・ロール・ファンタジー」は少しディスコがかっています。また、ジャストなリズムはその名も「リズム・マシーン」に顕著です。

 普通はこういう試みに手を出すと、本人たちの意気込みとはうらはらに悲惨な結果に終わることが多いと思います。実際、バッド・カンパニーの本作品に対しても否定的な意見を表明する人が多かったと思います。多分にジャケットのせいでもあるでしょうが。

 しかし、私はこのアルバムは素晴らしいと思います。前作では引っ込んでいたロジャースのボーカルは本作品では自然体で録音されています。そのボーカルは曲に合わせて表情を変えつつも、何ともいえずリラックスしたレイド・バックともいえる味わいを醸し出しています。

 ディスコ風のリズムを刻んでいても、カークのドラムとボズのベースはその魅力をいささかも減じることはありません。むしろその強靭さが際立つように思います。ラルフスのギターもアコースティック・ギターを使うことで新たな魅力を発揮しています。

 一言でいうとしたたかです。それほど四人の音楽的な結束は固く、自身の音楽に自信を持っているということなんでしょう。デビュー時の衝撃はもちろんありませんけれども、円熟味を増して大らかな魅力を最大限に発揮した見事なアルバムだと思います。

 本作品は全米3位、全英10位としっかり大ヒットを記録しました。さらに「ロックンロール・ファンタジー」もトップ10こそ逃しましたが、米国で13位と大健闘です。バッド・カンパニーはニュー・ウェイヴの時代にもしっかりと足跡を残しました。当時冷たくしてすいませんでした。

Desolation Angels / Bad Company (1979 Swan Song)



Songs:
01. Rock 'n' Roll Fantasy
02. Crazy Circles
03. Gone, Gone, Gone
04. Evil Wind
05. Early In The Morning
06. Lonely For Your Love
07. Oh, Atlanta
08. Take The Time
09. Rhythm Machine
10. She Brings Me Love

Personnel:
Paul Rodgers : vocal, guitar, piano, keyboards
Mick Ralphs : guitar, keyboards
Boz Burrell : bass
Simon Kirke : drums
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The Bones : chorus