ゴドレイ&クレームの5作目となるアルバム「バーズ・オブ・プレイ」は、彼らのカタログの中でもなぜか軽い扱いを受けています。ユーチューブの公式チャンネルにもあげられていませんし、発売時にもあまりしっかりしたプロモーションが行われなかったようです。

 前作は成功しましたし、ビデオ監督としてデュオの名前は10ccよりも有名になっていたにも係わらず、この扱いです。不思議ですね、という感想以外ないのが歯がゆいですけれども、作品自体に瑕疵があるわけでもなく、いつものように極上のサウンドが展開します。

 アルバムのタイトルは鷲や鷹などを指す「猛禽類」です。ジャケットをみると分かる通り、草食系とは正反対な、男を滅ぼす女性をテーマにしているようです。今となっては今一つ面白くないテーマですが、時はまだ1983年のことですから大目にみましょう。

 冒頭の曲「マイ・ボディ・ザ・カー」は全編ケヴィン・ゴドレイとロル・クレームのボーカルだけで出来ています。ボイパを使ったアカペラ・ソングです。クレームがケヴィンを家に送り届ける車中で、ケヴィンがシートに後ろ向きに坐っていたことに着想したそうです。

 ボックス・セットのブックレットにはシートに向き合うように坐る男の首から上が馬の尻と融合しているというムカデ人間のような写真が添えられています。馬のしっぽが男の背骨と一体化しています。これが彼ららしいユーモアなんでしょうね。ちょっと妙な感じ。

 しかし、この曲も演奏はすべて声ということを除けばとりたてて実験的というわけではありません。これに続く曲も含めて、本作品に収録された楽曲はゴドレイ&クレームにしては、それほど奇妙な曲はなくて、正統派なポップ仕様となっています。

 前作で多用されたラップはメロディアスなボーカルに席を譲っています。もちろんゴドレイ&クレームが制作しているという刻印はしっかり押されており、サウンド自体は隅々まで気が配られて聴けば聴くだけ発見があります。全体の印象がポップだというだけです。

 彼ららしいといえばシングル・カットされた「セイヴ・ア・マウンテン・フォー・ミー」のMVがあげられます。もはや彼らにビデオは欠かせません。囚人たちが暴動を起こす内容ですが、アクシデントでケヴィンが頭を割られてしまったそうです。大変ですね。

 一方、もう一つのシングル曲「サムソン」はレゲエのリズムを取り入れていて、10ccの「トロピカル・ラヴ」への返信ではないかと言われています。何をやっても10ccの名前が出てきてしまうところが残念です。この曲自体はそれほど関係なさそうですけれども。

 本作品は残念なことに英国でもヨーロッパ諸国でもチャート入りすることはありませんでした。シングル2曲も同様です。何がどうなんでしょう。前作よりもポップな作品ですし、親しみやすいと思うのですが、人気というのは分からないものです。

 アルバムは前作同様にクレームの自宅スタジオで録音されており、それを「L」からの付き合いのナイジェル・グレイのサレー・サウンド・スタジオでミックスしています。どちらのスタジオも同じレザーヘッドにありますから都合がよい。スタジオの住人デュオとしては理想的です。

Birds Of Prey / Godley & Crème (1983 Mercury)



Songs:
01. My Body The Car
02. Worm And The Rattlesnake
03. Cats Eyes
04. Samson
05. Save A Mountain For Me
06. Madame Gillootine
07. Woodwork
08. Twisted Nerve
09. Out In The Cold

Personnel:
Kevin Godley
Lol Crème
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Buy Barker : trumpet