ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによるユニット、シルク・ソニックのデビュー・アルバム「アン・イヴニング・ウィズ・シルク・ソニック」です。当たり前のように2022年のグラミー賞にて最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞ほか4部門を受賞しました。

 なお、グラミー賞授賞式にはもともと二人のパフォーマンスは予定されていませんでしたが、二人のツイッターでの呼びかけにファンが呼応したことでグラミー側が急きょ彼らのパフォーマンスを組み入れました。途中で二人が喧嘩をし出したのも大きかったようです。

 なんといいますか、この二人はグラミー賞の住人です。そもそも二人とも複数の受賞歴があります。マースに至ってはすでに11部門、パークでも4部門です。音楽界におけるグラミー界隈というものがあるとすると、彼らはテイラー・スウィフト他と並んでそこの重鎮でしょう。

 シルク・ソニックはもともと冗談で始めたユニットだったそうです。それぞれがすでにスーパースターですから余裕がありますね。興がのった二人はレコーディングをすることを発表しました。2021年2月のことです。そこから本作品の発表までわずか9か月です。

 まずリリースされたシングル「リーヴ・ザ・ドア・オープン」は当たり前のように全米1位を獲得するミリオン・セラーになりました。そして順調にシングルを発表し、満を持してこのアルバムの発表に至っています。驚くべきことに全米1位になっていないんですね。2位どまりです。

 それはともかく、グラミー賞はちゃんと受賞しています。最初に耳にした時から、これはグラミー賞をとるだろうと多くの人が予想したのではないでしょうか。グラミー界隈のアーティストがいかにも界隈で評価される類のサウンドを作り上げました。

 というのも本作品で展開されるサウンドは、往年のファンク、ソウル、R&Bを現代によみがえらせているからです。もちろん、そのまんまというわけではなく、現代の最先端のサウンドでもあるのがさすがに現代を代表するアーティストである二人の非凡なところです。

 特筆されるのは二人のベーシストの参加です。一人はPファンクの巨人ブーツィー・コリンズです。単なるゲストではなく、スペシャル・ゲスト・ホストと紹介されており、アルバム中で自己紹介までしています。もう一人は現代を代表するベーシスト、サンダーキャットです。

 いかにもスーパースターの二人が気楽に始めたユニットらしいお話です。それぞれの最新作にはないお気楽な感じがアルバムを格別なものにしています。長老をゲストに迎えてここまで昔のファンクやソウルを現代に再現するには遊び心が不可欠でしょう。

 ドラマーでもあるパークと稀代のメロディー・メイカーのマーズという取り合わせもぴったりです。正面からぶつかるのではなく、お互いがお互いを補うあうベストマッチです。かゆいところに手が届く緻密なアレンジも二人の余裕のなせる業です。

 昭和の人間である私などにはとても懐かしいです。一方でサウンドそのものは現代的でもあるので多分に啓発されてしまいます。年寄りにも大変優しいサウンドです。グラミー賞の審査員のみなさまも安心して先端サウンドに触れることができたのではないでしょうか。

An Evening With Silk Sonic / Silk Sonic (2021 Aftermath & Atlantic)



Songs:
01. Silk Sonic Intro
02. Leave The Door Open
03. Fly As Me
04. After Last Night
05. Smokin Out The Window
06. Put On A Smile
07. 777
08. Skate
09. Blast Off

Personnel:
Bruno Mars : vocal, guitar, percussion
Anderson .Paak : vocal, drums
***
Bootsy Collins : vocal
Thundercat : vocal, bass
Babyface : chorus
James King : vocal
D'Mile : chorus, bass, guitar, organ, piano, keyboards, percussion
Ella Feingold : guitar, vibraphone
Kameron Whalum : trombone, vocal
Marc Franklin : trumpet
Kirk Smothers : alto sax, baritone sax
Lannie McMillan : tenor sax
Brody Brown : bass
Krystal Miles : chorus
Jeremy Reeves : percussion
Charles Moniz : percussion
Alex Resoagli : on rumitas, cabasa
Hormer Steinweiss : drums
Larry Gold : strings conductor
Emma Kummrow, Luigi Mazzocchi, Blake Espy, Gared Crawford, Tess Varley, Natasha Coklett : violin
Jonathan Kim, Yoshihiko Nakano : viola
Glenn Fischbach : cello
Ron Kerber : flute