ワーナーさんの執念を感じる驚異の再現度によるCD再発でした。トーキング・ヘッズの「スピーキング・イン・タングス」のオリジナル初版がミニチュアサイズながらほぼ忠実に再現されています。私も限定盤となる初版を持っていただけに感慨も一入です。

 このデザインは、ポップ・アートの巨匠ロバート・ラウシェンバーグの手になるもので、彼はこの作品でグラミー賞を獲得しました。透明なプラスチック円盤が三種類、それぞれに赤、黄、青で写真がコラージュされています。円盤は回ります。レコードは透明でした。

 LPサイズですから迫力満点でした。私は長らく部屋に飾っておりました。音を聴くよりもジャケットを愛でる方に忙しかったかもしれません。再発の方は、CD自体が透明にはならないのが残念ですけれども、その他は忠実に再現されていて素晴らしいです。

 この作品には、トーキング・ヘッズにとっては初の全米トップ10ヒットとなった「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」が収録されています。アルバム自体も15位まで上がるヒットとなり、ようやく評判に人気が追いついた格好になりました。

 今作では、5人目のメンバーとまで言われ、2枚目から前作まで大活躍していたブライアン・イーノと袂を分かちました。そして、これまで以上にゲスト・ミュージシャンが多彩です。Pファンクのバーニー・ウォーレル、ファンク・バンド、ブラザーズ・ジョンソンのアレックス・ウィアー。

 お馴染みパーカッションのスティーヴ・スケイルズ、コーラスのノナ・ヘンドリックスの他、エコー&ザ・バニーメンとの共演で一躍ロック・ファンにも知られるようになったバイオリンのシャンカールや、現代音楽畑からデヴィッド・ヴァン・ティーゲムも参加しています。

 この作品は「リメイン・イン・ライト」と同じように、まずはメンバー四人によってベーシック・トラックが録音されています。そこに各種ソロ楽器のオーバーダヴィングがなされ、その後にデヴィッド・バーンが詞をつけた上でボーカルを乗せる形で制作されています。

 確かに聴いてみると、ベーシック・トラックは基本的には特定パターンの繰り返しになっています。ボーナスで収録されている「ツー・ノート・スウィヴェル」という未完成アウトテイクを聴くと、制作過程がよく分かるように思います。

 しかし、同様の手法を使ったとは言え、前作とはまるで感じが違います。前作のサイバーなポリリズムとは違って、ファンキーはファンキーでも分かりやすいファンキーになっています。いわばバンドらしい肉体を感じられる音になっています。

 収録曲の中では、痙攣したヒステリックなサウンドによるシングル・ヒット「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」、代表曲としてライブの定番となる意味不明な歌詞の「ガールフレンド・イズ・ベター」が光ります。後者は特にバーニーのシンセが凄いです。

 日本では「リメイン・イン・ライト」で最高潮に達したヘッズ・フィーバーが一段落したアルバムという感じが強かったです。ところが米国ではこれがコマーシャル・ブレイクスルーですから面白いものです。ここからの彼らはとてもアメリカ的になっていきました。

*2014年10月19日の記事を書き直しました。

Speaking In Tongues / Talking Heads (1983 Sire)



Songs:
01. Burning Down The House
02. Making Flippy Floppy
03. Girlfriend Is Better
04. Slippery People
05. I Get Wild / Wild Gravity
06. Swamp
07. Moon Rocks
08. Pull Up The Roots
09. This Must Be The Place (Naïve Melody)
(bonus)
10. Two Note Swivel (unfinished outtake)
11. Burning Down The House (alternative version)

Personnel:
David Byrne : vocal, keyboards, guitar, bass, synthesizer, percussion
Chris Frantz : drums, chorus, synthesizer
Jerry Harrison : keyboards, synthesizer, guitar, chorus
Tina Weymouth : bass, chorus, synthesizer, guitar
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Wally Badarou : synthesizer
Raphael DeJesus : percussion
Nona Hendryx : chorus
Richard Landry : sax
Dolette McDonald : chorus
Steve Scales : percussion
L. Shanker : violin
David Van Tieghem : percussion
Alex Weir : guitar
Bernie Worrell : synthesizer