グンジョーガクレヨンのセカンド・アルバムです。アルバム・タイトルは前作ともどもありません。それで通称セカンド・アルバムです。PASSレコードからのデビュー作から実に7年ぶりの新作でした。発売当初はまだやってたのかと驚いた人も多かったことと思います。

 淡い色合いのジャケットが何ともいえない雰囲気を醸し出しています。写っているのは人形なのか彫刻なのか、いずれにしてもにたりと笑った人の顔で、およそレコードのジャケットに似つかわしくない、気合の入らない絵柄です。ある意味で挑戦的です。

 ブックレットの内側には毛筆で「ぐんじょうがくれよん」の文字が書かれています。これはなかなかの書です。読めませんが落款まで押されています。ジャケ裏にも毛筆でバンド名が書かれており、こちらは英語です。この和モダンな美術センスが素晴らしいです。

 こうして、グンジョーガクレヨンのセカンド・アルバムは聴く前からすでにグンジョー・ワールドに引き込んでしまいます。奇を衒っているわけではありませんけれども、いちいち尋常じゃない。世の中から超然としているグンジョーガクレヨンらしい世界観です。

 7年たってもメンバーは変わっていません。リアルタイム・ダブ・ギターの組原正も健在ですし、舞踏家の園田游、ベースの前田隆、キーボードの大森文雄、ドラムスの宮川篤志と5人の構成は同じです。しかし、演奏のあり方は大きく変化しています。

 地引雄一氏の解説によれば、「PASS時代にはテーマのある曲が存在したが、ある時期からコード進行も決めない完全なインプロビゼーションとなったのだ」そうで、本作品は、「スタジオに器材を持ち込み、インプロビゼーションの緊張感をそのままにテープに収めたもの」です。

 彼らは「曲を演奏していた当時はスタジオ練習をきっちりとしていたが、そのうちに練習はやりきったという自信が生じ、本番のステージでの真剣勝負に集中するようになっていった」といいます。完全即興演奏を目指し、一回性を重視するようになっていったわけです。

 本作品には全10曲が収録されています。完全インプロビゼーションにしては曲数が多いのですが、逆にその分バラエティーに富んでいて面白いです。いわば即興の短距離走です。それぞれの曲ではメンバー構成も自由自在です。楽しそうです。

 完全即興の音楽にジャズとかパンクとかジャンル名をかぶせるのも変な気がしますが、グンジョーガクレヨンの場合はジャズというよりもパンクです。どうしてもロック寄りな匂いを感じます。組原や大森はもともとジャズ出身であるにもかかわらずです。

 ヒゴヒロシがプロデュースしているからというのもあるでしょうし、宮川の律儀なドラムのせいというのもあるでしょう。硬質なギターと園田の呪術的なボイスが自由に舞うサウンドの背骨は力強いロック的なリズムになっています。超絶かっこいいです。

 各楽曲のタイトルは文字のインプロビゼーションなのか、全曲意味が分かりません。余計なイメージを喚起せず、緊張感のあるサウンドそのもので勝負する、とても潔いアルバムです。そうなんです。彼らは本当に潔いバンドなんです。

Gunjogacrayon / Gunjogacrayon (1987 Telegraph)



Songs:
01. Moshirena
02. Wadesu
03. Tekuru
04. Reruto
05. Ngura
06. Gadete
07. Naguno
08. Dehaaha
09. Ushimashi
10. Sesaitoburu

Personnel:
園田游 : voice
組原正 : guitar
大森文雄 : keyboards
前田隆 : bass
宮川篤志 : drums