ロキシー・ミュージックの管楽器奏者アンディ・マッケイのソロ・アルバム第二弾です。ちょうどロキシーが活動を休止していた時期に制作されており、ロキシー復活を心待ちにしていた私には大変嬉しい作品でした。入手するのに苦労しただけに格別でした。

 ソロとしては4年ぶりの作品となる「リソルビング・コントラディクションズ」はジャケットに中国で中国人に囲まれてサックスを吹くアンディの姿が描かれています。この直截な表現通り、本作品はアンディが初めて訪れた中国にインスパイアされて制作されたアルバムです。

 アンディが中国を訪問したのは1978年4月のことです。鄧小平が実権を握るのは12月のことですが、1976年に四人組が逮捕されて文化大革命が終結し、改革開放が始まった時期にあたります。それまでは普通の外国人の中国訪問など考えられませんでした。

 私もアンディから遅れること5年、1983年に中国を訪問しました。2週間にわたる訪問で北京から上海まで汽車で移動する旅でした。この時、全工程を通じてスカートをはいた女性は3人しか見かけませんでしたし、上海ですら車はほとんど走っておらず、自転車の洪水でした。

 日本人ですら外国人というだけで珍しそうに眺められたくらいですから、金髪の白人女性などは外を歩くだけで後ろに見物人の行列が出来たそうです。一般の中国人にとって、アンディと奥さんのジェーンなどは大そう珍しい生き物に見えたことでしょう。

 好奇の目にさらされたアンディはよほど考えるところがあったのでしょう。彼がここで提示したのは「資本主義の申し子である自分が中国にいることの矛盾だ」ということで、その矛盾を解決する、すなわち「リソルビング・コントラディクションズ」がタイトルになりました。

 「誰もビートルズを聴いたことのない世界、ミニスカートやぴったりしたジーンズが悪い冗談だとして通訳に困る世界」、そんな世界とアンディのいる西側世界とのコントラストが大そう魅力的に写ったのだそうです。したがって中国そのものを題材にしたわけではないといいます。

 それでは何が題材かといえば、「自分自身と妙に単調だった70年代末期」だといいます。とはいえ、中華風メロディーがふんだんに出てきますし、中国の楽器も使われていますから、中国風味は満載です。それが何ともいえない面白みを与えていて面白いです。

 アンディのサックスやオーボエを支えるのは、セッション・ギタリストのレイ・ラッセルです。彼の貢献が最も大きそうです。その他、ロキシーの盟友ポール・トンプソンやフィル・マンザネラも参加しており、ジェフ・ベックとの共演で知られるモー・フォスターなど渋い人選です。歌はなし。

 しかし、この作品、小学校の運動会でかかっていた音楽を思い出します。今でははやりのJポップなどがかかりますが、昔は流行歌などはご法度で、はやりといえばせいぜい映画音楽、多くはフォーク・ダンスの曲や行進曲系のクラシックでした。

 オーボエはもとよりアンディのサックスはあまりロック的ではありませんし、中華風のメロディーとなると玉入れのバックグラウンドにぴったりなんです。ともあれ、私はこのアルバムが大好きで、今でも時々頭の中で鳴り響きます。中毒性の高い音楽です。

*2012年1月27日の記事を書き直しました。

Resolving Contradictions / Andy Mackay (1978 Bronze)



Songs:
01. Iron Blossom
02. Trumpets On The Moutains
1) Off To Work
2) Unreal City
03. The Loyang Tractor Factory
04. Rivers
05. Battersea Rise
06. Skill And Sweat
07. The Ortolan Bunting (A Sparrow's Fall)
08. The Inexorable Sequence
09. A Song Of Friendship (The Renmin Hotel)
10. Alloy Blossom
1) Trumpet In the Suburbs
11. Green And Gold

Personnel:
Andy Mackay : sax, oboe, cor anglais, Whistles, flageolets, piano, synthesizer
***
Ray Russell : guitar, strings
Mo Foster : bass
Tony Stevens : bass
Paul Thompson : drums, timpani, gongs
Peter Van Hooke : drums
Phil Manzanera : guitar
Tim Wheater : flute, Chinese reed flute
Chris Parren : synthesizer, fender Rhodes
Gavyn Wright : violin
Michael Laird : trumpet