アンディ・マッケイはロキシー・ミュージックのサックス奏者です。その彼が発表した初めてのソロ・アルバムが本作品「イン・サーチ・オブ・エディー・リフ」です。ジャケットの写真に示唆されている通り、ここではアンディがサックスやオーボエを吹きまくっています。

 ロキシー・ミュージックが発揮した類まれな個性の大きなポイントの一つはアンディのサックスやオーボエでした。大学で音楽を学んだ人ですから、当然楽器演奏はうまいはずだと思うのですが、彼の場合はあまり達者な感じはしません。演奏する姿も素人っぽいです。

 しかし、その下世話な感じのプレイがロキシー・サウンドを形作っていたわけですから面白いです。それに作曲家としても、ロキシーの代表曲である名曲「ヨーロッパ哀歌」や「恋はドラッグ」などを手掛けていますから、アンディのロキシーにおける重要な位置が分かります。

 そのアンディのソロ・アルバムですから期待しないわけにはいきません。制作されたのは1974年2月から6月のことです。ロキシーの歴史でいうと、「ストランデッド」から「カントリー・ライフ」の間です。バンドとして油が乗り切っていた時期です。

 まずこのアルバムの歴史にふれざるを得ません。アルバム発表は1974年で、翌年にアルバム未収録のシングル「ワイルド・ウィークエンド」が発表されます。そうすると、1976年にその曲を新たに加え、さらに何曲か入れ替えて新装発表されました。

 ご紹介するのはこの1976年バージョンの方です。新たに加わった曲は、1963年のレベルズのヒット曲「ワイルド・ウィークエンド」、ビートルズの名曲「ロング・アンド・ワインディング・ロード」、シングルB面のイーノとの共作曲「タイム・リゲインド」です。

 この曲名を見るだけでアルバムの性格が分かるというものです。この他にスキーター・デイヴィスの1962年の大ヒット曲にしてカーペンターズや竹内まりやを始め数多くの歌手にカバーされている名曲「この世の果てまで」などのポップスもサックスでカバーしています。

 さらにシューベルトの歌曲「音楽に寄せて」とワーグナーの「ワルキューレの騎行」があるかと思えば、ジミー・ラフィンのモータウン・ヒット「恋に破れて」もある。要するにポップス、ロック、ソウル、クラシックとさまざまな音楽ジャンルから選曲されています。

 それだけでは足りんとばかりに残りを占めるオリジナルはこれまたさまざまな曲調です。そうしたいろいろな曲でアンディは気持ちよさそうにオーボエとサックスを吹きまくります。これはアンディのサックスとオーボエの幅広さをこれでもかと見せつけるカタログ的アルバムです。

 バックを務めるアーティストは豪華です。ディープ・パープルのロジャー・グローバー、ロキシーからはフィル・マンザネラ、ポール・トンプソン、エディー・ジョブソン、ロキシーゆかりのジョン・ポーターやロイド・ワトソンなどなど。これは気持ちがいいでしょう。

 この当時、ブライアン・フェリーやフィル・マンザネラが発表していたソロ・アルバムが新たな地平を求める野心的なものであったのに対し、アンディの本作品はいかにも気楽に作ってみましたという感じがします。そこがこの作品の妙な魅力です。魅惑のサックス・ムードです。

In Search Of Eddie Riff / Andy Mackay (1974 Island)



Songs:
01. Wild Weekend
02. The End Of The World この世の果てまで
03. Walking The Whippet
04. What Becomes Of The Broken Hearted 恋に破れて
05. An Die Musik 音楽に寄せて
06. Time Regained
07. The Hour Before Dawn
08. Pyramid Of Night (Past, Present and Future)
09. The Long And Winding Road
10. Ride Of The Valkyries ワルキューレの騎行

Personnel:
Andy Mackay : sax, oboe, voice
***
Phil Manzanera : guitar, sax, treatment
Lloyd Watson : guitar
John Porter : guitar, bass
Roger Glover : bass
Eddie Jobson : piano, organ, synthesizer, violin, strings, glockenspiel
Brian Chatton : piano, clavinet, organ
Paul Thompson : percussion
Bruce Rowland : percussion
Janet Riff
Brian Eno