ソニーさんによるグローリアス・ソウル・ジェムズ・シリーズの一つとして発売されたウェブスター・ルイスの「8フォー80’s」です。このシリーズは「60年代から70年代、80年代にかけての未CD化アルバムを中心に」したいぶし銀のシリーズです。

 全11タイトルで半分は「やや冷えかけた年輩のソウル・ファンをターゲットに」しており、残りの半分は「若いこれからのソウル・ファンに」向けられたものだと言われていますが、今となっては本作品がどちらに含まれているのか今一つ分かりません。変なうたい文句ですね。

 ウェブスター・ルイスは1943年にボルティモアで生まれました。そこでモーガン州立大学を卒業した後、ニュー・イングランド音楽院で修士号を取得しています。ルイスは1970年代半ばにはロサンゼルスに居を移しますが、レコーディング・キャリアはそれ以前に始まります。

 最初のレコードはポストーポップ・スペースーロック・ビバップ・ゴスペル・タバーナクル・コーラス・アンド・オーケストラ・ベイビーを従えた「ライヴ・アット・クラブ7」でこれはカウンター・ポイントなるレーベルからの発表のようです。1972年のことです。

 その後、ルイスの仕事はミュージシャンばかりではなく、プロデューサーやアレンジャー、映画やテレビの音楽制作など多岐にわたります。一緒に仕事をしたアーティストにはマイケル・ジャクソンやディオンヌ・ワーウィック、ディジー・ガレスピーなど錚々たる名前が並びます。

 本作品は1979年に発表されたアルバムで「ハービー・ハンコックをプロデューサーに、タワー・オブ・パワー、ポール・ジャクソン、ベニー・モウピン等と繰り広げるファンク・ソウルの傑作盤」と紹介されています。プロデュースは本人とハンコックの共同なので念のため。

 ソロ名義としては2枚目にあたる本作品はルイス最大のヒット作となりました。本作品からは「ギヴ・ミー・サム・エモーション」のヒットが生まれ、アルバムも米国のR&Bチャートでは21位となるヒットを記録しています。コマーシャルなポテンシャルの高いアルバムです。

 1970年代の終わり頃といえば、ディスコ・ブームが陰りをみせてきた時期にあたります。一方で、ディスコ音楽を軽んじていた人びとがその魅力に気づきはじめた時期でもあります。まあ私のことですが。ディスコを十把一絡げにしていた不明を恥じるのみです。

 ルイスのこの作品などは艶っぽいファンキーなリズムを強調した曲であったり、ソウルに溢れたボーカル曲があったり、最後はルイスの軽やかなピアノ・ソロで締めたりと作品としての起承転結も素晴らしく、ディスコ的な華やかさが全体を覆う傑作であろうと思います。

 本作品でルイスとともに骨格を形作るのは、ドラムのジェイムス・ギャドソン、ベースのネイザン・ワッツ、ギターのワー・ワー・ワトスンとポール・ジャクソンで、いずれも西海岸の名うてのミュージシャンです。ここにタワー・オブ・パワーを含むホーン陣が加わります。

 さらに多数のボーカリストがクレジットされており、さながら歌合戦のようです。ディスコだからなのか何なのか、本作品が2005年にいたって初めてCD化されたとは信じられません。ディスコにはまだまだ探せば名盤が眠っていそうですね。

8 For 80's / Webster Lewis (1979 Epic)