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 アイナ・ジ・エンドはBiSHのメンバーから「アイナジ」と呼ばれることがあります。この呼び方はとても素敵ですね。アイナジ。江戸時代の職人さんの呼び方のようです。アイナは唄職人でもありますから、そんな意味でもぴったりではないでしょうか。

 アイナは2021年2月にはじめてのソロ・アルバム「ジ・エンド」を発表すると、同アルバムを引っ提げてツアーを行っています。コロナ禍ではありましたが、名古屋、大阪、東京を回るライブは全公演が即日完売したといいますからその人気のほどが分かります。

 この作品はツアー・ファイナルの翌日に発表されたアイナ初のEPです。今の時代にEPとシングルの区別に意味があるのか今一つ分かりませんが、何にせよ、アルバム発表から間髪を入れずにアイナの新曲が聴けるのは嬉しいことです。

 アルバム発表時にはツアーの記念の意味もこめて企画が出来上がっていたのでしょう。収録された全4曲はいずれもツアーで演奏されていたそうです。ツアー・バンドでの演奏を聴いた直後に本作品を買った人がうらやましいです。

 手元にあるのは初回限定盤で、7インチの紙ジャケ仕様になっています。昔のEP盤のサイズなのですが、もはやアイナの若いファンには何のサイズか分かっていないかもしれませんね。しかし、ジャケットが大きいのはそんなことを知らない人にも嬉しいことでしょう。

 ジャケットには辞書をくりぬいて収められた心臓に手を伸ばすアイナが写っています。この上なく「内緒」のコンセプトを表現しています。裏返すとハート型のくりぬきがあり、そこにはインナー・スリーブの人差し指で内緒ポーズをとるアイナの写真が収まっています。

 しかし、さらに恐ろしいのはそのスリーブを取り払った時に見える内蔵写真です。喉の内視鏡写真でしょうか。ひょっとしてもっと内緒?全体に薄めのピンク色がアレンジされている中、この写真は深いピンクでさらに生々しい。デザインは花房真也、BiSHと相性がいい人です。

 収録された曲は「あぁ揺れてる」、「彼と私の本棚」、「誰誰誰」、「勘違いべいびー」の四曲です。いずれもアイナが作詞作曲しています。この4曲はかなり振れ幅が大きく、曲調もさまざまです。もはや立派なシンガーソングライターです。

 前半の2曲はシンゴ・スズキのプロデュースです。関口シンゴやマバヌアも一部参加しており、オーヴァルとアイナのコラボが実現したものといえます。わずか2曲ですがアレンジはまるで異なり、後者のベースなどいかにもスズキらしくてかっこいいです。

 後半の2曲はソロ・アルバム同様に亀田誠治がプロデュースしています。アイナは椎名林檎にも指名されるなど東京事変との相性がよいですね。このうち「誰誰誰」はテレビ東京のドラマのテーマにもなったパンク的なスタイルの楽曲です。

 アイナのハスキーな歌声は相変わらず素晴らしいです。こうした実力派プロデューサーと仕事をしても堂々たる歌唱でかっこいいですが、ツアー・バンドと演奏する姿もかっこいいですよね。パンクな彼女だけにバンド・サウンドがやはり似合います。

Naisho / Aina The End (2021 Avex Trax)