アメリカにはJ・ガイルズ・バンドのトリビュート・バンドがいくつか存在します。彼らの音楽は生涯現役をうそぶくロック親父たちの琴線に触れるのでしょう。その気持ちはとてもよく分かります。小さめのホールで弾けるにはもってこいです。

 その数あるバンドの一つが「ブラッドショット」であり、も一つおまけに「ハウス・パーティー」です。前者は本作品の題名であり、後者はその1曲目の曲名です。J・ガイルズ・バンドはスタジオ三作目となる本作品「ブラッドショット」で一躍ブレイクしたのでした。

 本作品は何と全米トップ10入りしました。この時のヒット・チャートではポール・マッカートニーやジョージ・ハリソン、ポール・サイモンなどの名盤がそろっており、その中にいきなりワイルドなJ・ガイルズ・バンドが飛び込んだというわけです。

 さらにシングル・カットされた「ギヴ・イット・トゥ・ミー」も全米30位とトップ40入りしています。それもこれも精力的なツアーのおかげでしょう。じわじわとファンのベースを広げてきて、それがアルバム・セールスに結びついた。理想的な状況です。

 このアルバムではついにカバー曲が2曲だけになりました。全9曲中残りの7曲はボーカルのピーター・ウルフとキーボードのセス・ジャストマンのコンビによる作品で占められています。バンドのサウンドもブルース一辺倒からの脱却が明らかになってきました。

 とりわけシングル・ヒットした「ギヴ・イット・トゥ・ミー」は何とレゲエです。妙な曲で、レゲエで始まるものの、途中から炎のロックになっていきます。とはいえ、レゲエのリズムを取り入れた曲はそれまで彼らにも、いやロックにもそうはなかったはずです。

 その他の曲も人気の高い「サウスサイド・シャッフル」にしても、バラード調の「スタート・オール・オーヴァー・アゲイン」にしても、ブルース・ベースであることは間違いないのですが、骨太ながらも垢ぬけてポップさが表面に出てきています。

 そのバランスがちょうど良かったことがヒット・チャートでの成功に結びついたのでしょう。こうした方向転換をよしとしないファンも、まだこの作品での控えめな方向修正は、余裕をもって眺めていたのだろうと思います。全体にかっこいいですからね。

 本作品のプロデューサーはビル・シムジクに戻っています。スタジオ作品はシムジクが既定路線だったのでしょう。デビュー作の頃から比べると、かなりすっきりとした録音になっており、プロっぽいサウンドになっているのはシムジクの仕事かもしれません。

 本作品でもマジック・ディックのハーモニカは大活躍しています。ジャストマンのオルガン、ガイルズのギターがそれぞれ見せ場を分け合う構成はいつもの通りです。タイトなリズムに絡むルーズな色彩が彼らの真骨頂です。コンパクトにかっこいいんですよね。

 なお、本作品は赤いクリア・ビニールで発売されたことが話題になりました。ギミックを用いたことに異論はあったようですが、そんなことで自分たちの音楽が左右されたりはしないんだとウルフは言い切っています。そりゃそうです。かっこいいですね。

Bloodshot / The J. Geils Band (1973 Atlantic)