ペドロは2021年12月22日の横浜アリーナ公演を締めとして、無期限活動中止することを発表しており、そこに向けて全国ツアーを行っています。そんな状況において、またまたお騒がせ事務所WACKらしく、無告知で本作品が発表されました。

 当初はアナログだけで、翌日には2曲入り100円シングルが、そして2週間後に3種類の仕様でCD発売となりました。9月のライヴのCDとブルーレイを付けたBOX仕様、映像付き通常盤とCDのみの通常盤です。私はCDのみ通常盤を買いました。

 ペドロの始まりは居酒屋に呼び出されたBiSHの「僕の妹がこんなにかわいいわけはない」担当アユニDが渡辺じゅんじゅんにベース&ボーカル担当でバンドを作ることを告げられたことでした。あれから3年、ここにはあの場のアユニからは見違えるアユニがいます。

 「『やれって言われただけなんですけど』みたいなムードがもしかしたらあったのかもしれないですけれど、次第にアユニさん自身から『バンドをこうしたい』という気持ちが出てきたというか。」とギターの田渕ひさ子はアユニを評しています。

 前作からベースもサポートなしでしたが、今回はアユニがプロデュースにも松隈ケンタと渡辺とともにクレジットされています。それに何といっても全曲アユニの作詞作曲による楽曲となっています。ものすごい早さで進化しています。

 「曲も作るし、バンドを引っ張るし、ビジュアル面も含めて、PEDROがどういうバンドかというのをアユニさんが全部ちゃんと作っている。そこは目まぐるしく変わりました」とナンバーガールのレジェンド・ギタリスト田渕ひさ子は続けます。もう立派なバンドですね。

 ペドロはアユニDがボーカルとベース、田渕がギター、松隈スクールの毛利匠太がドラムのスリーピース・バンドです。古くはクリーム、ちょっとくだってポリスに代表されるロックの原点ともいえる最小ユニットで、まさしくストレートにロックをやっています。

 そのロック・バンドが発表した3作目が本作品「後日改めて伺います」です。田渕が「三枚目で化けるバンドだ!」と思ったという通りに、このアルバムの完成度はとても高いです。自然な裂け目がパンクになっている状況を通りこして、ザ・ロック・バンドになっています。

 ギターについて、田渕は「直接アユニさんから『こんなギターにしてほしい』と言われた曲も結構あったので、『いいのかな?』と思いながら自分の趣味に走った部分もあったかもしれないです」と語っています。「死ぬときも笑ってたいのよ」なんてとても印象的です。

 アユニDが描く歌詞の世界はますます冴えわたっています。何とも正直なんですよね。言葉の選び方のセンスも独特で不思議な魅力があります。そしてアイドル声ながら、彼女の歌もロック・バンドを従えて堂々としています。

 さまざまな音楽を聴き漁ってどんどん吸収してきているようで、もはや死に体のロックの最後の救世主ではないかとすら思います。正面から堂々とロックに取り組んで、なおかつ新しい世界観を提示するとは凄い話です。活動休止は撤回してほしいですね。

参照:「田渕ひさ子、PEDROの3年間を振り返る」柴那典(Real Sound)

Gojitsu Aratamete Ukagaimasu / PEDRO (2021 EMI)