カール・ヘクターがプレゼントするガーナ系アフロ・ロックのアーティスト、ジョニー!のファースト・アルバムです。しかし、このアルバムにはタイトル以外にカール・ヘクターの名前は見当たらず、カール・ヘクターって誰のことかと思ってしまいました。

 カール・ヘクターはドイツ出身のギタリスト/プロデューサーのJJホワイトフィールドの別名なんでした。ホワイトフィールドは本作品のプロデューサーを務めていますし、バンドでもギターとキーボードを担当しています。ややこしいですね。

 ホワイトフィールドは1990年代の初めから60年代や70年代のアナログなファンク・サウンドをリバイバルさせてきており、このアルバムを発表したレーベル、ナウ・アゲイン・レコードと長年にわたりコラボレーションを続けてきました。

 ホワイトフィールドはガーナのアフロ・ビートのレジェンド、エボ・テイラーを盛り立てて、新たなアルバム作りとツアーに協力してきました。そして、その中でエボの息子であるヘンリー・テイラー及びパーカッションとボーカルのエリック・オウスに出会っています。

 ジョニー!はこの二人とホワイトフィールドのトリオを中心に結成したバンドです。ここにトルコのドラマー、バーンド・オエズセヴィムとインドネシアのベーシスト、トミ・シマトゥパンを加えて何だか凄い多国籍なバンドになっています。カタカナ表記、合ってるでしょうか?

 ちなみにシマトゥパンもオエズセヴィムもホワイトフィールドのプロジェクトに参加した経験があります。シマトゥバンはホワイトフィールド・ブラザーズ、オエズセヴィムはロディニアというバンドです。On-Uサウンドの一連のミュージシャンのファミリーぶりを思い出します。

 ジョニー!のサウンドは、アフロ・ロックをコアとし、ガーナの音楽ハイライフやスイート・ソウル、サイケデリックにまで広がったサウンドだとレーベルが説明しています。ガーナの催眠的なグルーヴと70年代のザンビアのザムロックにも言及しています。

 別の角度からは現行レア・グルーヴ・シーンを彩るサウンドであるとすることもあります。レア・グルーヴの現在形というのも面白いのですが、あくまでアナログで少しレトロな感覚を呼び起こすサウンドだということではないかと思います。

 私は初めて聴いた時に日本のグループ・サウンズや少し前のインドのロック・シーンを思い出しました。英米のロックに憧れて自分たちでやってみたけれども、身体に染みついた別のグルーヴが染み出てきて、何やら面白いサウンドになったという感覚です。

 ここではトルコとインドネシアのリズム隊、ヘンリーとエリックのアフロ勢によるヒプノティックなグルーヴ、ホワイトフィールドによるロック崩れのギターの三者が不思議な融合をみせており、まるでアマチュアのような面白いサウンドが体験できます。

 正真正銘2021年に制作されたアルバムですけれども、まるで同時代感がしません。かといって古臭いわけでもなく、何が何やら訳が分かりません。これは妙にはまってしまいかねない危険なサウンドだといえます。恐るべし、ジョニー!

Karl Hetor Presents: Johnny! / Johnny! (2021 Now-Again)