「ピンキー・ブルー」からわずか1年、「ハッピー・バースデイ」からでも2年足らずで発表されたオルタード・イメージの3枚目のアルバム「バイト」です。どうでしょう、このジャケット。クレア・グローガンの変貌ぶりに目を見張ります。ふりふりのリボンはもう見当たりません。

 ジャケットにてオードリー・ヘップバーンよろしくポーズを極めているグローガンの写真を撮影したのは、ロキシー・ミュージックのジャケット写真などを手掛けたニール・カークです。バンドのイメージを一新しようとする意図がありありと見えます。

 彼女たちはマーティン・ラシェントと離れてロサンゼルスに向かい、マイク・チャップマンをプロデューサーにしてアルバムの制作にかかります。チャップマンはスイートやマッドなど英国のパワー・ポップ勢を手掛けたのち、ブロンディーやナックで大ヒットをものしていました。

 ブロンディーとの対比もされていたオルタード・イメージですから、ちょっとべたな展開のような気がしたものですけれども、そこは当代きってのポップ職人と英国ポップ・シーンの花です。「ドント・トーク・トゥ・ミー・アバウト・ラヴ」を筆頭にしっかり成果を残しました。

 流行りのシーケンサーがリードするそこはかとないディスコ調の曲はシングルでリリースされて英国ではトップ10入りするヒットを記録しました。手堅いというか何というか、ツボを押さえたサウンドになっているのはさすがです。

 しかし、チャップマンと制作したのは4曲のみで、アルバムの半分を占めるに過ぎません。残りの4曲はロンドンに戻って、トニー・ヴィスコンティをプロデューサーに迎えて制作されました。この二人が並んでいるというのも大変に新鮮な気がします。

 ヴィスコンティは自伝の中で、この作品のプロデュースが彼のキャリアのターニングポイントになったと書いています。何かと思えば、「プロデュースしているバンドが自分よりも断然若いということを初めて思い知らされたんだ」ということでした。面白い話です。

 簡単にこうした大物プロデューサーが捕まるのもグローガンの魅力のなせるわざかもしれません。ヴィスコンティは「クレア・グローガンのような妖精と仕事ができたっていうのが一番よかった」なんて言っています。歌声も魅力的ですしね。

 ヴィスコンティの担当している曲はチャップマンに比べるとどことなく英国風の湿り気が感じられて、パンク出身でゴスっぽいサウンドを展開していた初期のオルタード・イメージの姿を垣間見ることができます。しみじみと聴き入ってしまいます。

 ジャケットではシックな落ち着いた女性となったグローガンですけれども、声まで変えることはできませんから、歌い出せばきゃんきゃんした若い女の人の声です。この声が重厚なポップ・サウンドに破調をもたらしていてオルタード・イメージの個性となっています。

 本作品を制作する前にメンバー交代がありました。それが予兆であったのかもしれません。オルタード・イメージは本作品を発表後、ツアーを終えるとほどなく解散してしまいます。アイドルを輩出してしまうと存続は難しいのかもしれませんね。残念なことでした。

Bite / Altered Image (1983 Epic)