「ハッピー・バースデイ」の大ヒットで一躍ポップ・スターとなったオルタード・イメージのセカンド・アルバムです。プロデュースは前作のスージー&ザ・バンシーズのスティーヴン・セヴェリンではなく、「ハッピー・バースデイ」のマーティン・ラシェントです。

 もはや選択の余地はありませんでした。本作品「ピンキー・ブルー」のボートラに入っている「ハッピー・ニューイヤー」という曲が彼らの需要のされ方を示しています。これは「ハッピー・バースデイ」の替え歌です。まるで日本のアイドルのようですね。

 ボーカリストのクレア・グローガンが主演した映画「グレゴリーズ・ガール」も再び上映するようになりましたが、なんと大ヒット作「炎のランナー」との二本立てだったそうです。この時期、オルタード・イメージは確かに旋風を巻き起こしていたのでした。

 グローガンはニュー・ロマンティックのスターの一人、スパンダー・バレーのゲーリー・ケンプとプラトニックに付き合うようになり、彼らの最大のヒット曲「トゥルー」のインスピレーションとなりました。何かと話題が満載です。まさにアイドル。

 さらに話題は続きます。本作品ではかの御大ジョン・ピールがコーラスで参加しています。「クレアは妻を除けば私をレコーディング・スタジオ入りして歌わせることができる唯一の人間だ」とジョンは語っています。問題曲「ソング・サング・ブルー」で歌声が聴けます。

 「ソング・サング・ブルー」は往年のポップ・スター、ニール・ダイアモンドのカバーです。何が問題かと言いますと、この曲と続くオリジナル曲「ファニー・ファニー・ミー」がやり過ぎだと批判されたんです。曲がりなりにもパンク出身なのにまるでファミリー仕様だということでしょう。

 オルタード・イメージはその進路をスージー&ザ・バンシーズではなく、ラシェントのポップ路線に定めました。ラシェントといえばヒューマン・リーグの路線転換の方が有名です。オルタード・イメージはシンセ・ポップではありませんが、両者は確かに似た匂いを感じます。

 しかし、このアルバムは「ハッピー・バースデイ」の路線が全開かというとそうとも言い切れないところが面白いです。バンドにとってもラシェントにとっても「ハッピー・バースデイ」はやはり特異な曲だったのではないかと思います。確かに再現不可能なハッピーさでした。

 ぎこちなくポップを目指した風情が漂っており、その過剰適応の結果が「ソング・サング・ブルー」へのやり過ぎ批判につながったのでしょう。しかし、本作品ではそのあわいの妙なバランスを楽しむのもまた一興です。変なアルバムだとも言えるわけです。

 本作からの最大のヒット・シングル「アイ・クッド・ビー・ハッピー」にバンドのサウンドの特徴がよく表れています。前面に出てくるベースを中心としたリズム隊にきらきらしたギターが絡み、そこにグローガンのおきゃんなボーカルが踊る。これもニュー・ウェイブの典型です。

 本作品は全英チャートでは12位とオルタード・イメージのアルバムの中では最もチャート順位が高いです。ちょっとジャケットが残念ですけれども、オルタード・イメージの旋風が巻き起こった記念碑的なアルバムです。ニュー・ウェーブのポップ派最右翼の一つです。

Pinky Blue / Altered Image (1982 Epic)