♪ハッピー・バースデイ♪と可愛らしく歌われるタイトル曲、お誕生パーティーの最中を撮影したようなジャケット、オルタード・イメージが1981年に発表したデビュー作品は何とも可愛らしいイメージでパンク/ニュー・ウェイブ期の英国を彩りました。

 オルタード・イメージはスコットランドのグラスゴー出身のバンドです。その中心はボーカリストで女優もしていたクレア・グローガンです。彼女は当時の若い女の子らしく、スージー&ザ・バンシーズのスージー・スーに憧れておっかけをしています。

 バンドを始めたクレアは憧れのバンシーズに、ライヴでサポートさせてほしいと手紙を添えてデモ・テープを送ります。これが通ってしまうんですから、当時のパンク界隈の自由度が偲ばれます。バンドを結成してまだ半年に満たないのに。

 バンシーズの後ろ盾を得たオルタード・イメージですが、世間ではバンシーズのクローンだとして批判を受けます。ここで登場するのが大物DJ、ジョン・ピールです。彼は積極的にオルタード・イメージを後押しし、3回にわたってジョン・ピール・セッションに登場させています。

 こうして強運に恵まれたオルタード・イメージはマイケル・ジャクソンと同じエピック・レコードと契約を交わし、制作されたのが本作品「ハッピー・バースデイ」です。プロデュースにあたったのはバンシーズのベーシストであるスティーヴン・セヴェリンです。

 オルタード・イメージの作り出すサウンドは確かにバンシーズの雰囲気があります。重いビートに流麗なギター・サウンドで、当時のゴス、ゴシック・ロック・サウンドの流れにあります。重々しいサウンドはクレアのボーカルとギャップがあってなかなか面白いです。

 しかし、ガーディアン紙のロビン・デンスロウはクレアのことを、興奮した子供たちのパーティーでスージー・スーのパロディーをやっているように見える、と評しているように、クレアはスージーには当然のことながら成りきれませんし、目指すところも少し違いました。

 クレアは「私たちはいつもポップに向かっていた。ABBAとか好きだったし、私たちのことを皆に知ってほしかった。トップ・オブ・ザ・ポップスにも出たかったし、ヒット曲が必要だった」と素直に話しています。パンク・サークル出身とはいえ世代が下ってこだわりがなくなりました。

 そこで書かれたのが「ハッピー・バースデイ」です。この曲のみプロデュースはスティーヴンではなく、バズコックスなどを手掛けたマーティン・ラシェントが当たっています。クレアにぴったりの可愛らしい曲は狙い通りの大ヒットを記録します。

 「ハッピー・バースデイ」は、いきなり全英チャートで2位となり、オルタード・イメージは一風変わったパンク・アイドルとなり、クレアはある意味でデボラ・ハリーに続くポップ・アイコンになっていきました。そもそも女優としても活躍していますしね。

 この作品では「ハッピー・バースデイ」のきらきらポップとその他の曲のゴシック感のギャップも楽しむことができます。その両方で、クレアの存在感が際立っているのですから面白いです。ゴシックのクレアとポップのクレア。まさに時代はニュー・ウェイブでした。

Happy Birthday / Altered Images (1981 Epic)