さすがに100万ドルともいわれる巨額の契約金をもらっただけあって、アルバム発表のペースが速いです。ジョニー・ウィンターのコロムビア・レコード第二弾は前作からわずか半年で発売されました。その名も「セカンド・ウィンター」です。

 この命名にしびれます。セカンド・サマーという言葉はよく聞きますが、それを想起させてちょっと驚かせる仕掛けのタイトルです。ファミリー・ネームに意味があると、素敵なタイトルをつけ放題ですね。ウィンターなんていう苗字には憧れを抱いてしまいます。

 この作品は短期間に制作されましたけれども、オリジナルLPは2枚組の大作になっていました。ただし、いわゆるD面はのっぺらぼうですから、3面を使ったちょっと中途半端な形態での発売です。全体で47分弱ですから一枚でもよかったのに面白いです。

 これには当時の技術の制約があったため、満足のいく音質で発売するにはこの形しかなかったという理由がついています。今一つ腑におちない話ですが、そこは100万ドルの男ですから、レーベル側も最大限に気を遣っていたのでしょう。

 その変則的な形はともかく、本作品もまたまた充実した作品です。今回はゲスト・ミュージシャンは入れず、前作のトリオに弟エドガー・ウィンターが全面的に参加した四人組形態ですべての楽曲を演奏しています。バンドの結束はより高まったことでしょう。

 よく言われるように、前作がディープなブルース一辺倒だったのに対し、本 作品ではロックンロール色が強まっています。それはカバー曲の選曲に一番よく表われています。本作では全11曲中5曲がジョニーのオリジナルで残りの6曲がカバーです。

 カバー曲には、これぞロックンロールの代表曲、チャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」が含まれています。これに先立つ2曲はいずれもリトル・リチャード作品で、「のっぽのサリー」のB面曲「スリッピン・アンド・スライディン」と「ミス・アン」です。

 さらに後のジョニーのライブで定番となる「追憶のハイウェイ61」が驚きです。いわずとしれたボブ・ディランの名曲です。ジョニーはこれを気持ち良く歌っています。ブルース一辺倒だと思われていたジョニーの幅広い音楽性を感じさせて感動的ですらあります。

 なお、「グッド・ラヴ」の作者デニス・コリンズはジョニーのアルバムにちょくちょく顔をだすベーシスト兼作曲家です。この楽曲もカバーではなく、ジョニーのための書下ろしのようです。ちょっとこのあたりの情報には自信がないのですが。

 最後のC面はジョニーのオリジナルが4曲並んでいます。「アイ・ラヴ・エヴリバディ」と対をなす「アイ・ヘイト・エヴリバディ」を配置するなどなかなか業師です。後者の方が明るいのも面白い。そして最後の「ファスト・ライフ・ライダー」の実験的なサイケデリック調も嬉しいです。

 そんなわけでセカンド・ウィンターにして、エドガーのキーボードやサックスも活躍して音楽の幅はぐっと広がりましたが、基本のギター弾きまくりは変わっていません。米国では前作に及びませんでしたが、英国ではチャート入りしており、高い評価を得た作品です。

Second Winter / Johnny Winter (1969 Columbia)