失礼なことに、非音楽家による音楽という意味のアウトサイダー・ミュージックに分類されている奇跡のバンド、シャッグスによるセカンド・アルバムです。そもそもデビュー作が100枚しか世に出回らなかったシャッグスにセカンドがあるのがいいですね。

 シャッグスが1969年に発表したデビュー作は、世界最強のロックンロールバンドといわれるNRBQのリーダー、テリー・アダムスが奔走して1980年に再発されたことでようやく陽の目を見たばかりか、世界中を震撼させたのでした。

 NRBQのトム・アルドリーノはリイシューに際して、シャッグスそのものであるウィギン姉妹を探し当て、以降交流が始まります。その中で長女のトッドはシャッグスは他の曲も録音していることを思い出し、そのテープをテリーに渡しました。それがこの作品につながっています。

 それを皮切りにテープがいっぱい出てきたそうで、「これは世に出すべきだと確信したんだ」と、セカンド・アルバム構想がまとまりました。スタジオで録音した音源、自宅で録音したもの、さらにはタウンホールでのライヴ録音などがきちんと一枚にまとまりました。

 録音時期は1970年か71年頃だそうで、ファースト・アルバムの録音からは1、2年経過しています。この間もシャッグスは精力的にライヴ活動を行っています。活動の成果はしっかりと演奏力の向上という形でこのアルバムに反映されています。

 シャッグスはリードギターとボーカルのドット、リズムギターのベティ、ドラムのヘレンのウィギン三姉妹が中心ですが、この作品の頃にはベースに従妹のレイチェル・ウィギンが加わっています。レイチェルは加入以前に楽器経験があったそうです。

 4人となったシャッグスのセカンド・アルバムははファーストに比べると随分普通の意味で音楽的になりました。特に前半はアウトサイダーとは呼べないくらいしっかりしています。しかし、後半になると、シャッグスらしいみょうちきりんな音楽が全開でほっとします。

 今回の最大の特徴は全11曲のうちの5曲を占めるカバー曲の存在です。たとえば、カーペンターズの「イエスタデイ・ワンスモア」。ここではギターがボーカルと同じメロディーを弾いていて、とても不思議な雰囲気を醸し出しています。

 またライヴが聴けるのも嬉しいです。録音は客席でテープを回したような音質なのですが、それだけにシャッグスのライヴの楽しさが伝わってきます。パンクとは本来こんなライヴを目指したものではなかったかとさえ思います。

 一方、黒幕のお父さんがお兄さんを引き込んでラップを披露する曲もあります。一家総出での録音は楽しそうです。シャッグスは結局、このお父さんが亡くなって活動を停止してしまいます。家族の物語は複雑そうですね。

 全体にとてもキュートなサウンドがつまっています。ファーストほどの衝撃はありませんけれども、ライヴ経験を積んで一回り大きくなったシャッグスの演奏は中毒性があります。私はディアフーフなどを思い出しました。シャッグスの遺伝子は残っているに違いありません。 

Shaggs' Own Thing / The Shaggs (1982 Red Rooster)