最近、ボックス・セットのマニアになっています。安くてボリューム満点ですし、大人買いの雰囲気も味わえます。ボックス・セットを数多く出しているのは何といってもコロンビア・レコードです。というわけで、コロンビア作品が自然と多くなってきました。

 この作品もコロンビア・レコードによる5枚組「ピエール・ブーレーズ」の一枚です。このセットのよいところは当時のLPをそのまま復刻していることです。本作品も単体でCD化された際には「中国の不思議な役人」とカップリングされましたが、ここではカップリングなしです。

 本作品に収録されているのは、ベラ・バルトークの晩年を代表する「管弦楽のための協奏曲」です。指揮はもちろんピエール・ブーレーズで、演奏はニューヨーク・フィルハーモニックです。シカゴ交響楽団の演奏盤もあり、そちらの方が有名なようですね。

 バルトークは1940年10月に奥さんと共に生まれ故郷のハンガリーを離れ、アメリカに移り住みました。ナチスの迫害を逃れるためにやむを得なかったとはいえ、祖国愛の強いバルトークにとっては苦渋の決断でした。おまけに白血病を患っていましたし。

 時は戦争の最中であり、異国からやってきた作曲家にとって、その生活は困難なものだったことが容易に想像されます。入院もし、経済的に困窮したバルトークを支援すべく、指揮者クーセヴィツキーがバルトークに発注したのが本作品「管弦楽のための協奏曲」です。

 「管弦楽のための協奏曲」というのは聞きなれない名前です。普通はピアノ協奏曲とかバイオリン協奏曲ですが、ここではオーケストラの各楽器のみならず楽器群を独奏楽器として扱うという手法が採られており、それがタイトルの意味だそうです。

 作曲に至る経緯を聞くと俄然楽曲が生き生きとしてきますし、それに応えて新しい楽曲構造を提示するというバルトークの本領発揮が復活を鮮やかに印象付けています。何とドラマチックなことでしょう。楽曲自体ももちろんドラマチックで派手です。

 そんな曲をブーレーズは楽しげに指揮しています。シカゴの方はちゃんと聴いたことがないので、比較はできませんが、私はこのニューヨーク・フィルハーモニックの演奏で十分に満足しています。クラシックは復刻される名盤しか聴いていないので、基本的に満足なんですが。

 この曲は5つの楽章に分かれており、身も蓋もないタイトルが付けられています。「序章」、「対の提示」、「悲歌」、「中断された間奏曲」、「終曲」です。考えてみれば曲全体のタイトルも曲を説明しているだけです。いかにも数学的なバルトークらしいです。

 古典派やロマン派を一般的なクラシックとするならば、バルトークの作品は現代音楽的です。本作品などは彩り豊かですけれども、極めて理知的で構造的な音楽ですから、まさにブーレーズにぴったりです。ひんやりした感触が素敵です。

 実際、ブーレーズはバルトークが大好きな様子で、ドイツ・グラモフォンでは20年近くにわたってバルトーク・プロジェクトを行っています。シカゴ交響楽団の作品はそちらの一枚です。確かにバルトークとブーレーズは相性が良さそうです。ベストマッチですね。

Boulez Conducts Bartók / Pierre Boulez (1973 CBS)

シカゴ盤ですwww