グリーン・デイのメジャー第二作は「インソムニアック」、すなわち「不眠症」と題されました。いろいろに由来が語られるのですが、何の色もつけずにストレートに「不眠症」とだけ解しても十分に面白いタイトルです。ポップ・パンクのグリーン・デイらしいチョイスです。

 私にとってはリアルタイムで手に入れたグリーン・デイのアルバム第一弾です。あまりにストレートでポップなパンクの連打に心を踊らされたことを覚えています。昔パンクにはまった身としては懐かしいサウンドかと思いきや、十分に同時代的でした。かっこいいです。

 本作は前作「ドゥーキー」が異例の特大ヒットを続ける中で制作されました。インディーズからメジャーに殴り込んだばかりの若者バンドにとっては、かなりのプレッシャーだったことでしょう。いきなりスーパースターですから戸惑いも大きかったと思います。

 一方で、出身のアンダーグラウンドなパンクのサークルからは裏切者扱いされるわけですから大変です。いくら自分たちは変わっていないと思ったとしても、どちらのサイドからも責められるわけです。何で責められなければならないのか考えてみれば不思議ですが。

 この状況で、フロントマンのビリー・ジョー・アームストロングはもはや何も感じることができなかったと後でわが身を振り返っています。そんな状態を反映して、本作品をやり直したいと考えているようでもあります。脳天気に聴いていた私は反省した方がよいかもしれません。

 とはいえ、そんな状態であればこそ、グリーン・デイの三人は持てるエネルギーを本作品に込めることができたのだろうと思います。とにかく疾走感が強いハイエナジーな曲が連打されます。ポップなメロディーをタイトなパンク・サウンドに乗せるスタイルは見事です。

 この頃には音楽のジャンルもかなり細分化されるようになってきており、グリーン・デイはポップ・パンクと位置づけられることが一般的です。もともとパンクはポップなものだと思いますが、ハードコアなパンクもありますから、それはそれで分からないではありません。

 いくらポップ・パンクとはいえ、パンクはパンクですから、歌詞は脳天気なラヴ・ソングばかりというわけにはいきません。その点、グリーン・デイはしっかりしていて、本作品などでも若者の共感度は高いです。それなのに責められるとはスターも大変です。

 本作品からは「ギークはパンク・ロッカー」、「スタック・ウィズ・ミー」、「ブレイン・シチュー/ジェイディッド」、「ウォーキング・コントラディクション」の4曲というか5曲がシングル・カットされていずれもそこそこヒットしています。グリーン・デイ人気は沸騰していました。

 アルバムも前作同様に全米2位となり、ダブル・プラチナムに輝いています。しかし、前作ほどには長続きせず、この作品は商業的には失敗したと位置づけられています。200万枚売れても失敗扱いされるなんて贅沢なことですが、本人たちにはお気の毒です。

 全然失敗作などではありません。自分達の置かれた状況を素直に音楽に反映させて、迷いなくパンクなサウンドを追求するグリーン・デイはかっこいいです。最初から最後まで疾走するポップでパンクなサウンドが眩しいです。

Insomniac / Green Day (1995 Reprise)