突然思い立って「仁義なき戦い」シリーズ5作を一気に見てしまいました。見だすと止まりません。「新・仁義なき戦い」までで自制してしまいました。まずは最初のシリーズの余韻を楽しんで、新シリーズは後日に取っておくことにしました。

 広島のやくざ抗争を題材にした飯干晃一原作のノンフィクションを基にした「仁義なき戦い」は1973年1月に封切られるや予想もしない大ヒットを記録し、わずか1年半の間に完結編までの5作が制作されました。いずれも大ヒットです。

 一旦完結したシリーズですが、即座に新シリーズが企画され、そちらも1年半で3作が制作されました。ここまではすべて菅原文太主演、深作欣二監督作品です。1979年の「その後の仁義なき戦い」、2000年代の2作はいずれも別の監督で主演も別です。

 「仁義なき戦い」シリーズは日本人のやくざ好きを完成させました。菅原文太の極道仕草に影響されていない同時代の男はいないのではないでしょうか。やくざ用語もこの映画で一般化し、ついでに広島弁もやくざ言葉だとされてしまいました。

 そしてサントラはもはや大スタンダードとなっています。今でもテレビのバラエティー番組を筆頭に、毎日どこかで「仁義なき戦い」が流れてきます。それほどこの音楽は強度があります。半世紀前の音楽なのに今でも現役です。

 本作品は、「その後の仁義なき戦い」までの「シリーズ全9作品の主要楽曲を集大成した初のサントラ音楽集」です。1995年発売なので、布袋寅泰やスカパラの作品は入っていません。シリーズ8作品までは津島利章、「その後」のみ柳ジョージが音楽を担当しています。

 「仁義なき戦い」の音楽といえば津島利章です。津島は大学在学中に音楽コンクールに入選、パリにも留学していますし、国際コンクールでも入賞を果たしてもいます。その後、1960年代から映画やテレビ、ラジオ、舞台などに多くの楽曲を提供して大活躍した人です。

 津島にとっても本作品は代表作と言えます。♪チャーンチャーンチャララ♪と一発なるだけでそれと分かるあまりに有名な出だしの音楽は日本で最もよく使われる効果音とまで言われます。この効果がなければ映画の魅力は半減するのではないかとまで思います。

 「仁義なき戦いのテーマ」は深いです。基本的に正編5作品はこのテーマを核に進んでいきます。バリエーションは豊富で、その違いを楽しむのがこうしたコレクションの醍醐味です。この曲では何といってもベンベンなるギターが魅力です。迫力あるベンチャーズです。

 これは007シリーズに匹敵するテーマ曲であろうと思います。しかもこちらの方がバリエーション豊かと来ています。これほど映像と楽曲が密接不可分に結びついた例はそうありません。日本映画最高のサントラと言っても良いのではないでしょうか。

 「その後の」柳ジョージはボートラとして扱うのがよいと思いました。相撲の土俵に野球選手が入ってきたようなそんな感じがしてしまいます。彼もやりにくかったのではないでしょうかね。津島の姿はとにかく巨大でした。今宵もどこかで仁義なき戦いが鳴り響いています。

Toshiaki Tsushima, Yanagi George / JIngi Naki Tatakai Soundtrack Collection (1995 VAP)