グリーン・デイです。パンク・バンドなのにアメリカの国民的なバンドにのし上がった彼らのデビュー作品がこのアルバムです。発表した時はまだメンバーはみんな10代という若さでした。普通は驚くものですが、彼らの場合はだれも驚かないでしょう。青春バンドですから。

 ただしグリーン・デイのファンは真面目な人が多いのか、このアルバムをデビュー作だと言い切ると怒られます。本来の彼らのアルバム・デビューは1990年4月にルックアウトなるインディー・レーベルから発表された「39/スムーズ」だからです。

 本作品は同じルックアウトが翌年10月に発売したCD作品で、「39/スムーズ」に二枚のEP「1000アワーズ」と「スラッピー」を加えており、タイトルもその三つの作品を混ぜ合わせたものに変えられています。それがデビュー作だと言えない理由です。

 とはいえ、再録音というわけではありませんし、曲順も各作品ごとにまとまっています。要するにボートラ付きのデビュー作再発だと処理して何ら問題はありません。しかし、そういうところにこだわるのもファンの心理としては楽しいものでしょうね。

 改めて紹介すると、グリーン・デイはギターとボーカルのビリー・ジョー・アームストロング、ベースのマイク・ダーント、そしてドラムのジョン・キフマイヤーの三人組パンク・バンドです。なお、ドラムのジョンはこの作品までで、長くバンドに貢献するトレ・クールに代わります。

 デビュー作発表時点で三人は18歳くらいです。バンドは1987年から活動しているそうですから、日本でいえば高校生がバンドを組んでそのままデビューしたということです。しかし、決して10代のアマチュア・バンドによる作品だとは思えないクオリティです。

 自主制作として作られたアルバムは最初の1年間で3000枚くらい売れました。私も自主制作に手を染めたことがありますが、3000枚も売るのは至難の業です。しょっぱなから将来の大物バンドの片鱗が見えていたということでもあるでしょう。

 再発された本作品はその後じわじわと売れて結局米国ではゴールド・ディスクに輝きます。それは後のグリーン・デイの活躍があってこそですけれども、このアルバムの質が高くなければそこまでは売れなかっただろうと思います。

 デビュー作はわずか22時間で全てのレコーディングを完了したと言われています。グリーン・デイはキャリアのスタート時点から迷いが一切ないことを物語るエピソードの一つでしょう。とにかくそのサウンドは潔いです。聴いていると爽快です。

 英国のパンク/ニュー・ウェイブの湿った感じは一切ありません。ポジティヴなエネルギーに満ちたストレートなトリオによるロックが聴こえてきます。エネルギーは10代ですけれども、完成度的には老成したアルバムでもあります。誰にでもできることじゃない。

 後に大成功を収めるグリーン・デイの第一章として完成度の高い作品です。私ももちろんメジャー・デビュー後に彼らを知ったので、後追いでこのアルバムを聴きましたが、これは十分傑作であることを思い知りました。グリーン・デイはこの頃からかっこよかったんですね。

1,039/Smoothed Out Slappy Hours / Green Day (1991 Lookout)