ゴジラの次はニンジャです。ブルー・オイスター・カルトは日本とゆかりのあるバンドですね。残念ながらジャケットは忍者っぽくありませんが、裏ジャケットにはしっかりと忍者が描かれています。絶対、こちらを少しアレンジして表にした方が良かったのに。残念です。

 その裏ジャケットに描かれた忍者はメタル仕様で、BOCのロゴを手裏剣にして投げています。このコンセプトは素晴らしいです。ヘヴィ・メタルの元祖であり、オカルト的世界の重鎮としてのブルー・オイスター・カルトらしさがいかんなく発揮されています。

 本作品はブルー・オイスター・カルトの10枚目のスタジオ・アルバムです。本作には結成当初からのメンバーであり、彼らの知的な雰囲気を一身に担っていたアラン・レイニアが参加していません。彼は2年後にはバンドに戻るのですが、この事情はよく分かりません。

 レイニアの後任にはトミー・ズヴォンチェックが招かれました。トミーは前作に参加していたアルド・ノヴァのツアー・バンドに在籍しており、その縁だと思われます。なお、彼はパブリック・イメージ・リミテッドの日本ツアーにも参加しています。

 また、ドラムもリック・ダウニーからジミー・ウィルコックスに代わりました。ジミーはパティ・スマイスのスキャンダルやリック・デリンジャーのバンドで活躍していた人です。パワー・ポップ寄りのミュージシャンと言ってよいでしょう。

 さらにその縁で同じくスキャンダルにいたドラムのトミー・プライス、リックのバンドにいたベースのケニー・アーロンソンなどがゲストで参加しています。一度たがが外れると外部のミュージシャンを起用することに躊躇がなくなったようです。

 結局、オリジナル・メンバーはエリック・ブルーム、バック・ダーマ、ジョー・ブーチャードの3人になってしまいました。ただし、プロデュースにはBOCの産みの親とも言えるサンディ・パールマンが復帰していますから、その分ほんの少しだけ先祖返りした気がします。

 曲作りにも外部の人材を投入しており、ジューダス・プリーストへの曲提供で知られるボブ・ハリガン・ジュニアやカナダのバンド、レガットのレガット兄弟、グラミー賞のカントリー部門にノミネートされたこともあるラリー・ゴットリーブなどです。

 お約束の詩人は今回はジム・キャロル、ディカプリオで映画化された「バスケットボール・ダイアリーズ」の原作者です。彼は特にレイニアと親交が篤かった人で、ここではバック・ダーマの曲「パーフェクト・ウォーター」に詩を提供しています。

 そんな話題に事欠かないアルバムですけれども、楽曲は相変わらず充実しています。前半のポップな展開もいいですし、後半の長尺の曲でギターが大活躍するさまは圧巻です。とはいえ、かつてのBOCらしさが失われたとして評判は今一つでした。

 各楽曲のメロディーも充実していますし、しみじみと聴きどころが多いのですが、過去のBOC像に囚われると耳をふさぎたくなる人が多いことでしょう。考えてみると彼らはそのキャリアのほとんどをそんな葛藤と共に過ごしてきました。考えてみれば理不尽な話です。

Club Ninja / Blue Öyster Cult (1985 Columbia)