ブルー・オイスター・カルトの9枚目となるスタジオ・アルバムです。ライヴ・アルバムが好評だったことから、ごりごりのハード・ロックで攻めるのかと思いきや、これまで以上にポップな作りになりました。後に現れるポップ・メタルの先駆でしょうか。

 彼らは比較的プロデューサーによってサウンドの色が変わりやすい人たちでした。本作品「ナイト・レボリューション」もその例のもれず、新たに起用したブルース・フェアバーンの持ち味が色濃く出たサウンドになりました。彼の後の成功から振り返ればなおのこと。

 フェアバーンはこの3年後にボン・ジョヴィの「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ」の特大ヒットをプロデュースします。ただ本作品の頃はまだ駆け出しだったかというと、すでにラヴァーボーイの作品でミリオン・ヒットを飛ばしていました。それでもBOCには先見の明があったといえます。

 さらに大きいのはゲスト・ミュージシャンの参加です。BOCはこれまでボーカルを除き、メンバーの担当楽器にゲストを起用したのは前作ライヴにおけるロビー・クリーガーのカメオ出演のみでした。それが本作品では結構重要なところでゲストが活躍しています。

 まずは冒頭の「テイク・ミー・アウェイ」を作曲するとともにギターとシンセを全面的に担当しているのが、カナダのアーティストで前年に大ヒットを飛ばしたアルド・ノヴァです。いきなりこの曲、このサウンドが出てきたので、かなり驚きました。

 さらにパティ・スミスの詩を使った「シューティング・シャーク」では、アメリカン・アイドルの審査員として有名なランディ・ジャクソンがごりごりのベースを弾いています。また、シンセのプログラミングにはシナジー・プロジェクトのラリー・ファストがあたっています。

 ラリーはピーター・ガブリエルやケイト・ブッシュ、フォリナーなどに係わった80年代を代表するシンセ奏者で、東京ディズニーシーの音楽制作にも取り組んだ人です。アルバムの醸し出す1980年代の香りはラリーとフェアバーンの寄与が大きいと思います。

 不動のメンバー構成だったBOCからアルバート・ブーチャードが抜けたことはゲストを積極的に活用する契機となったものと思います。もともとワンマン体制ではなかったので、そうなるとプロデューサーの活躍が大きくなってくるのでしょうね。

 米国でのシングル曲は「シューティング・シャーク」でした。1から10まで80年代を感じさせるMVが制作されており、結構MTVでオンエアされています。なかなか素敵な曲なのですが、これを初めて見てブルー・オイスター・カルトであると分かった人はそういないでしょう。

 全体にサウンドは1980年代の売れ線を突っ走っており、BOCらしさがないと酷評されています。それで商業的には惨敗と言ってよい結果になったのですから皮肉です。以前にもこういうことがあったのに懲りない人たちであります。

 しかし、彼らは間が悪かっただけです。このアルバムに収録された楽曲はやはりメロディアスで粒ぞろいです。結構密かに愛している人は多いと思います。最後のへなへなしたバラードまで含めてブルー・オイスター・カルトの作る曲はどれもこれも輝いています。

The Revölution by Night / Blue Öyster Cult (1983 Columbia)