ブルー・オイスター・カルトの3枚目のライヴ・アルバムです。スタジオ・アルバム8枚に対し、ライヴが3枚ですからかなりのハイペースです。レコードの売上はさほどではないものの、アリーナ級のライヴ・バンドとしてのブルー・オイスター・カルトの矜持を感じます。

 再発で盛り盛りになったので誤解してしまいそうですが、前作ライヴはライヴ盤としては極めて短い収録時間でしたから、2枚組となった本作品はブルー・オイスター・カルトのファンにとっては溜飲が下がる作品となったことでしょう。

 それに何よりも選曲がいいです。この頃はスタジオ・アルバムをすべて揃えるなんていうことはよほどのことがないとできませんでしたから、ベスト盤の需要が高かった時代です。ライヴ盤を選択する理由の一つにベスト盤的だからというのがあったことを思い出しました。

 ジャケットにはもちろん収録曲が記載されていますが、実際の収録順ではなく、各楽曲の発表順になっています。それを見れば一目瞭然です。このアルバムにはデビュー作「狂気への誘い」からこの時点での最新作「呪われた炎」の8枚から万遍なく楽曲が選ばれています。

 そしてライヴ盤らしいおまけはドアーズの「モリソン・ホテル」に収録されていた「ロードハウス・ブルース」のカバーで、なんとここにはドアーズのギタリスト、ロビー・クリーガーがゲスト参加しています。バック・ダーマとのギター・バトルが素晴らしいです。

 しかも客席も一緒になって歌っています。このエピソードからも伝わる通り、バンドと客席の一体感が感じられます。さほどMCがあるわけではありませんし、アンコール形式はとられていませんが、とても幸せな雰囲気であることがよく分かるライヴです。

 とはいえ、結成以来不動のメンバーでやってきたブルー・オイスター・カルトに初めてのメンバー・チェンジがあったのも事実です。このアルバムではついにドラムがアルバート・ブーチャードから彼らのローディーだったリック・ダウニーに交代しました。

 ただし、このライヴのうちの2曲はミラーズ・ツアーとブラック・サバスとのブラック・アンド・ブルー・ツアーからの録音で、ここではアルバートがドラムを叩いています。それ以外の11曲は1981年10月から12月の「呪われた炎」ツアーでの録音で、ダウニーがドラマーです。

 ドラムが交代したにも係わらず、このライヴはそんな事件をまるで感じさせないほど充実しています。まるでハード・ロックのライヴの教科書のようです。たとえば最新作からの「恐怖の薬物戦争」。演奏時間はスタジオの倍でギター・ソロなどが増し増しです。

 「ゴジラ」も演奏は長尺になっており、エリック・ブルームの日本語アナウンスもしっかり入ります。ポップな「お前に焦がれて」も「死神」もここではハード・ロッキンな展開です。「全員ギター」などの仕掛けに頼らず、重厚長大なハード・ロックの王道ライヴです。

 本作ではBOCを知り尽くしたサンディ・パールマンがまた自らプロデュースを担当し、BOCの魅力を余すところなく伝えることに成功しました。1970年代のロックで育った私にとっては、是も非もない最高のハード・ロック・アルバムです。

Extraterrestrial Live / Blue Öyster Cult (1982 Columbia)