しばらくポップ路線を歩んでいたブルー・オイスター・カルトですが、気合の入ったジャケットからも想像される通り、7作目のスタジオ・アルバム「カルトサウルス・エレクタス」で、再びギターを中心としたハード・ロック路線に回帰しました。

 本作品が発表されたのは1980年6月です。この頃、英国からニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル、NWOBHMが勃興し、時代に取り残されたと思われていたヘヴィメタルが一気に息を吹き返しました。そこからメタル界は安定して歩んでいきます。

 その動きが追い風となって、本作品はこれまで彼らに冷たかった英国でも12位となる大ヒットを記録しました。元祖ヘヴィ・メタルのブルー・オイスター・カルトの底力がようやく英国でも認識されたという意味では大きな慶事です。

 前作「ミラーズ」が酷評され、商業的にも今一つだったことから、バンドは新たな外部プロデューサーとしてブラック・サバスを手掛けたマーチン・バーチを迎えました。彼らの影の立役者サンディ・パールマンがブラック・サバスに係わっていたことの縁のようです。

 BOCとブラック・サバスは本作品のプロモーションで共にステージに立ちます。題してブラック・アンド・ブルー・ツアーです。いちいちやることがかっこいいですね。どちらもアリーナ級のステージ・アクトですから、大いに盛り上がったことでしょう。

 本作品には前作で導入された女声コーラスもストリングスもありません。ゲスト参加はフォリナーやピーター・ガブリエル、ポール・サイモン、さらにはビリー・ジョエルなどとの共演で知られるサックスのマーク・リヴェラのみです。しかも1曲のみ。

 キーボードもさほど目立たず、ギターを中心としたハード・ロック路線が追求されています。そうなるとボーカルも全9曲中6曲をエリック・ブルームが担当します。アルバートとジョーのブーチャード兄弟とバック・ダーマは今回はそれぞれ1曲ずつのボーカル担当です。

 一方、オカルト路線も健在で、英国のSF作家にしてホークウィンドとアルバムまで出しているマイケル・ムーアコックが1曲だけですが作詞にかかわっており、彼の作品「ストームブリンガー」をアルバムに持ち込んでいます。なお、彼は前作でも1曲参加していました。

 また、ハード・ロック・ファンへのサービスとして特筆すべきは「マーシャル・プラン」です。あのマーシャル・プランとアンプのマーシャル社をかけた楽曲で、拍手を交えた疑似ライヴとなっており、さらにディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」などの一節が流れます。

 全体にキャッチーでメロディアスな、彼ららしいハード・ロックが戻ってきており、今回は評判は上々でした。とはいえ、ライヴでの盛り上がりに比してアルバムのチャート・アクションが今一つであることは否めません。いいアルバムなんですけれども。

 なお、毎回楽しませてくれるジャケットですが、今回は「ベヒーモス・ワールド」という英国の画家リチャード・クリフトン・デイの作品の一部です。裏ジャケにある首の長い恐竜も同じ絵からとられています。サウンドのイメージを後押しする素晴らしいジャケットです。

Cultösaurus Erectus / Blue Öyster Cult (1980 Columbia)