バンドの出世作となった前作ライヴ「地獄の咆哮」から3年、早くも2枚目のライヴを発表したブルー・オイスター・カルトです。ライヴ・バンドとしての本領を発揮して、本作品も彼らにとっては大きなヒットになりました。全米チャートは44位ながら10年かけてダブル・プラチナです。

 今回は「暗黒の狂宴」となりました。地獄はキッスの専売特許になったわけですから、せっかくの死神ジャケットなのに地獄は使えませんでした。とはいえ、原題はまるで関係なく、魔法にかけられた夜としか訳せないのが悔しいハイセンスなタイトルです。

 「タロットの呪い」、「スペクターズ」とポップな路線でのヒット作が続いた後にこうしたライヴで締めるというのは戦略としてはなかなか上手いと思います。「ゴジラ」や「死神」もライヴ演奏となるとスタジオ盤以上にハードロッキンな表情が見られます。

 しかし、ライヴ盤発表はこの頃の流行りでもありました。その淵源はピーター・フランプトンの「カムズ・アライヴ」の誰も予期しなかった特大ヒットにあります。そんなわけでステージを追体験するというよりも、ヒットを狙った編集になっています。

 このアルバムはほんの36分程度の短さですし、MCもアンコールもありません。しかもライヴの目玉となる全員ギターの「5ギター」も収録されていません。「死神」は当然入っていますし、MC5の「キック・アウト・ザ・ジャム」とアニマルズの「朝日のない街」のカバーがあります。

 こうした当時の風潮に引っ張られた構成を正すべく、2007年のCD再発時には収録時間をほぼ倍にするボートラが収録された上に、何とメリーランドでのライヴを収録したDVDがカップリングされて発表されることになりました。恐るべきサービスぶりです。

 ボートラには「5ギターズ」からの「ワイルドで行こう」がちゃんと収録されていますし、「朝日のない街」が再度収録され、この曲はこのツアーで始めて披露されたことがMCから分かる仕組みになっています。そのための重複収録のようですね。

 DVDはありがたいです。彼らのステージはレーザー光線を使ったギミックが有名ですが、今更40年も前のそれを見たいわけではなく、メンバーの役割分担を確認できるのがありがたい。みんながギターを弾きますが、やはりバック・ダーマが断然頭抜けているなとか。

 「5ギターズ」ではジョー・ブーチャードのベース・ソロが堪能できたり、ドラムのアルバート・ブーチャードがギターを抱えて出てきてソロまで弾くことが確認できたりと見てて飽きることがありません。やはりブルー・オイスター・カルトはライヴ・バンドです。

 ハード・ロッカー然とむさくるしいボーカルのエリック・ブルームに対し、バック・ダーマとアラン・レイニアはスタイリッシュに白で決めていて、不思議な取り合わせです。ちなみにDVDにはありませんが、ブルームは「ゴジラ」の日本語の台詞を頑張って再現しています。

 すっかりライヴ盤然としたライヴ盤に生まれ変わったわけですが、私はオリジナルのコンパクトな感じが捨てきれません。ライヴ盤にしてライヴの冗長感がまるでなく、疾走するハード・ロック・バンドとしてのブルー・オイスター・カルトを堪能できます。

Some Enchanted Evening / Blue Öyster Cult (1978 Columbia)