ブルー・オイスター・カルトが真価を発揮した彼ら初のライヴ・アルバムです。やはりハード・ロックはライヴが似合います。演奏力もみんな高いし、とにかく盛り上がります。2枚組ながら全米チャート22位に上る初の大ヒット・アルバムとなりました。

 原題は「オン・ユア・フィート・オア・オン・ユア・ニーズ」で邦題には訳しにくい。ですが、この言葉、最後のアンコール曲「ワイルドで行こう」の前にパティ・スミスがシャウトしています。これが悪魔的でかっこよすぎます。原題をしっかり押さえておきましょう。

 結局、邦題は「地獄の咆哮」になりました。地獄といえば泣く子も黙るキッスです。キッスの初期アルバムには必ず「地獄」が邦題に入っていました。この頃のBOCはこのキッスを前座にしてライヴをやっていたんです。その縁かもしれませんね。

 アルバムは1974年に行われた北米ツアーを収録しています。何と7か所ものライヴから演奏が選ばれており、結構なこだわりを感じます。もちろん、2枚組のアルバムは一つのライヴをみているようにかっちりとまとまっています。緻密なアルバムなんですね。

 選曲は過去3枚のアルバムからきっちり3曲ずつ、これにライヴの定番となるオリジナルのインストゥルメンタル曲「バックス・ブギー」、ブルース歌手ジミー・リードが初録音した「アイ・エイント・ガット・ユー」の替え歌、そしてステッペン・ウルフの「ワイルドで行こう」です。

 「アイ・エイント・ガット・ユー」はヤードバーズやアニマルズもカバーしていましたし、後にエアロスミスやブルース・ブラザーズ他、数多くのバンドがカバーする定番曲です。ブルー・オイスター・カルトがブルース曲をカバーするのは当然と言えば当然ですが、やや驚きました。

 「ワイルドで行こう」のカバーはすでにスタジオで録音してシングル発売していましたし、アルバムの締めですから、彼らの自信作なんでしょう。スタジオ版に比べると、よりオリジナルに忠実な気がしますが、完全に自分たちのものにしており、楽しそうに盛り上がります。

 彼らのライヴの名物の一つは全員ギターです。「メッサーシュミットME262」でそれが披露されます。もともとギターの二人、アラン・レイニアとバック・ダーマに加え、ボーカルのエリック・ブルーム、ドラムのアルバート・ブーチャードまでがギターを演奏します。

 ジョー・ブーチャードはベースのままですが、ベースもギターですから、5人全員がギターを抱えて勢ぞろいする様は圧巻です。市井に数多い親父バンドのようで微笑ましい気もします。特にギター・バトルというわけでもないのですが、これは文句なく楽しいです。

 アラン以外はそれぞれがリード・ボーカルもとるなど、各メンバーが複数のパートを分け合うのはライヴでも同じで、ブルー・オイスター・カルトのクールな魅力が炸裂します。同時代のマウンテンやグランド・ファンクなどと比べると格段にクールです。

 このアルバムで初めて登場したバンド名のロゴは元祖ヘヴィ・メタル仕様です。BOCを元祖ヘヴィ・メタルとするのは音楽的にはやや居心地が悪いですが、ジャケットやロゴに関しては迷いなくそう言えます。イメージ戦略にもたけたクールなバンドでした。

On Your Feet Or On Your Knees / Blue Öyster Cult (1975 Columbia)