時代的には、セックス・ピストルズの「勝手にしやがれ」と同じ月に発表されたというよりも、「サタデイ・ナイト・フィーバー」の翌月に発表されたと表現した方が座りがよいエレクトリック・ライト・オーケストラ、ELOの大ヒット・アルバムです。

 前作「オーロラの救世主」の次は2枚組の大作「アウト・オブ・ザ・ブルー」です。これまた世界中で大ヒットし、英米で1位にこそなりませんでしたが、結果的には1000万枚を超えるウルトラメガヒットを記録しています。本作から続く数年間が商業的にはピークとなりました。

 ますますELOそのものと化してきたジェフ・リンですが、この頃の創作意欲は大変なもので、2枚組収録の全17曲をわずか1か月弱の間に全部書いてしまったそうです。ジェフ・リン30歳の奇跡とでも言えばよいでしょうか。

 曲作りは短時間でできましたが、録音は時間をかけています。アルバムにはエンジニアを務めたマックへの謝辞が書かれており、そこには1127時間もの間ミキサーの奴隷となったことへの感謝が述べられています。執拗な多重録音のせいでしょうね。

 その時間に現れている通り、ゴージャスなサウンド作りがされています。分厚いボーカル・ハーモニー、全編を通して鳴り響いているように思ってしまうオーケストレーションなどなど、緻密な音作りがなされており、いわゆる完成度は高いです。

 とはいえ、バンドの弦楽器奏者3人はほとんど録音に参加しておらず、ほぼすべてがオーケストラによる演奏になっているそうです。それにシンセの役割も大きくなってきたように感じますし、ボコーダーの多用など、ELOの特色の一角が崩れる前兆もみられます。

 そして、さすがはELO、そんな音作りでも難しいことにならず、ポップさが極まっています。本作からも「ミスター・ブルー・スカイ」、「ターン・トゥ・ストーン」、「スウィート・トーキン・ウーマン」、「ワイルド・ウェスト・ヒーロー」などの大ヒットが生まれています。

 結果的に1970年代後半を代表するポップ・アルバムとなりました。この時代のポップスを思い出すときに必ず一曲はELOが出てきます。もはやプログレッシブ・ロックと呼ぶこともはばかられるポップスの王道路線です。さわやかでゴージャス、美メロの洪水。

 また、このアルバムはジャケットが素晴らしいです。イラストを描いているのは長岡秀星です。カーペンターズの「ナウ&ゼン」やアース・ウィンド&ファイヤーの「太陽神」などで名を知られる長岡の代表作の一つとなりました。

 ELOの世界観は長岡によって過不足なく表現されているように思います。ボストンの「幻想飛行」にも通じる、ハードではない楽しいSF的世界。これがサウンドに100%マッチしており、作品の完成度をさらに高める結果となっています。

 実に隙のない見事なアルバムですけれども、こういうアルバムを作った後には起こりがちな通り、7人のメンバーとしては最後のアルバムになりました。そうしてバンドは解体していくことになります。それもまた定めだと思わせる作品です。

Out Of The Blue / Electric Light Orchestra (1977 Jet)