エレクトリック・ライト・オーケストラ、ELOが飛躍を遂げたアルバムです。ELOの四作目となる「エルドラド」は発表されるとそれほど時を置かずして米国でゴールド・ディスクに輝きました。ヒット・チャートでは16位どまりですが、この時の彼らにすれば大ヒットです。

 さらにシングル・カットされた「見果てぬ夢」は全米トップ10入りする大ヒットを記録しました。ここから長らく続くELOのヒット街道の先駆けです。ヒット・メイカーとなった後の姿を知っているだけに、本作品の成功は一際感慨深いものがあります。

 この作品は完全なコンセプト・アルバムです。「黄金郷(エルドラド)を夢見てさすらいの旅を続ける夢想家の話」を歌ったもので、今やELOを牛耳るジェフ・リンは、曲を書き始める前にストーリーを固めたと言いますから徹底したものです。

 何でもジェフはクラシック音楽を愛好する父親にELOの音楽を批判されて発奮したのだそうです。そうなるとお手本はオペラということになるのでしょう。確かにクラシックであれば、コンセプト・アルバムは当たり前ですから、オーケストラを名乗る以上は挑戦すべき課題でした。

 本作品での初めてはオーケストラの導入です。クラシック界からルイス・クラークを招き、オーケストラとコーラスのアレンジメントを任せ、さらにオーケストラの指揮もお願いしています。これによってELOのサウンドはますますオーケストラ色が濃くなりました。

 ELOはこの時点では3人の弦楽奏者を擁しており、その点が彼らの際立った個性でした。これまでのアルバムでは彼らの演奏を多重録音していたのですが、この作品では彼らの演奏に加えてフル・オーケストラを重ねたわけです。三人もしっかり活躍しているのがいいです。

 しかし、バンドに弦楽奏者を入れてオーケストラを表現するという、いわばロック的な心意気はリアルなオーケストラを導入したことで薄らぎました。オーケストラとの共演は他のロック・バンドでもやっており、何だかオーケストラを入れて特別なオーケストラでなくなった感じです。

 とはいえ、さすがにオーケストラ・アレンジは見事なもので、アルバム全体でしっかりと物語を語って、実に堂々たるトータル・アルバムっぷりを見せています。お父さんもこれならば納得してくれたのではないでしょうか。ロック・オペラもここに極まった感があります。

 しかも一曲一曲は独立したポップ・ソングとしても十分に楽しめます。ここがELOの凄いところです。ビートルズの遺伝子を引き継いだバンドならではです。ビートルズといえば、本作品の一曲「偉大なる支配者」は「アクロス・ザ・ユニバース」によく似たスタイルの楽曲です。

 前作にも同様の曲がありました。ぱっと聴くと、ビートルズかと思うほどビートルズっぽい。しかし、ジェフはもともとポール・マッカートニーの後継者と言われていた男です。それが、このところ同じビートルズとはいえ、ジョン・レノンばかりが出てくるのが面白いです。

 ジャケットは「オズの魔法使い」の一場面だそうです。お話も脳天気なファンタジーですし、プログレといえばプログレなんですが、どうにもあっけらかんと明るい。そこのところが陰影を好むイギリスでは今一つ受けなかった理由でしょう。ライトでアメリカンなサウンドです。

Eldorado / Electric Light Orchestra (1974 Warner Bros.)