エレクトリック・ライト・オーケストラ、ELOはもともとザ・ムーヴを率いて数々のヒットを放った鬼才ロイ・ウッドの発案したコンセプトに沿って誕生しています。そして、ザ・ムーヴの別動隊でもあったため、ELOの初期とザ・ムーヴの後期は混然としています。

 そのため、ロイ・ウッドが脱退してしまった後、ELOは果たして存続可能なのかが巷で話題になっていました。今から振り返ると信じてもらえないようなお話です。今や、ELOを知っている人の数はザ・ムーヴを知っている人の数など圧倒してしまっていますから。

 そのウッドのコンセプトは弦楽器を投入することによってクラシック的な要素をもったポップなロックを展開するというもので、ビートルズがもたらした革新精神を引き継ぐのだという壮大なものでした。これに共鳴してELOの共同創設者となったのがジェフ・リンです。

 本作品はELOの第三作目にあたります。前作の途中でウッドが抜けてしまったために、本作品は初めて最初から最後までジェフが中心になって作り上げた新生ELOの初めてのアルバムということになります。題して「第三世界の曙」です。

 邦題はまるで的外れでとにかく大仰な気がしますが、原題の「オン・ザ・サード・デイ」はそれ以上に壮大な感じがします。ジャケットを飾る宇宙から地球を眺めるジェフ・リンの姿はまさに神、「オン・ザ・サード・デイ」は世界の創造を描いた旧約聖書創世記冒頭を思わせます。

 さすがにこのジャケットはまずいと思われたようで、米国盤はメンバーが中途半端に海賊に扮した集合写真に差し替えられています。こちらの方がロック・バンドっぽくて、ほんまもんのオーケストラと誤解する人もいなさそうで、米国には向いている気がします。

 ELOの最大の特徴はメンバーに複数の弦楽器奏者がいることでした。当初はチェロが3人、バイオリン1人の編成でしたが、本作品では途中で出入りがあったりして、クレジットされているのは全部で5人です。ただし全員が一緒に演奏しているわけではありません。

 アルバムはA面とB面でかなり感じが違います。まずA面はシングルのみの発売が企図されていた「ショウダウン」を除き、全4曲が組曲形式で収録されています。大仰なタイトルがついており、「母なる大海の裂けし時」なる小曲で前後を挟んで壮大な物語が語られます。

 一方、B面は前作とほどんど時を同じくして録音されているため、A面よりも前ということになりますが、かなりポップで短めの曲が並んでいます。最大の話題は何といってもTレックスのマーク・ボランのゲスト参加です。オーケストラにマーク・ボランが参加する、いいですね。

 ここでのマークはギターを弾いているのですが、これがもう聴けば分かるさマークのギター、そのものです。しっかりとマークの個性が刻印されたギターを見事に配した曲作りはジェフ・リンのありがたみをいや増しに増していきます。

 弦楽をいかしたELOの作品もここでかなりポップに振れているわけですけれども、B面最後の曲はグリークの「ペールギュント」の「山の大王の広間にて」を比較的忠実に、しかしロック仕様で演奏したもので、ELOのELOたる所以をしっかりと教えてくれます。

On The Third Day / Electric Light Orchestra (1973 Warner Bros.)