現代音楽家フィリップ・グラスによる、いわゆるポートレート・オペラ三部作の最後を飾る作品「アクナーテン」です。アインシュタイン、ガンジーに続く三人目は古代エジプト王国のファラオ、アメンホテプ4世、別名イクナートンないし英語読みでアクナーテンです。
アクナーテンは紀元前14世紀半ばに、父アメンホテプ3世を次いでファラオの座につきました。アクナーテンは王権をも越える力を持つに至った宗教勢力に果敢に戦いを挑み、アトン神を唯一神とする宗教改革を断行したことで有名です。
その一環としてアクナーテンはアケタトンに宗教都市を建設し、テーベから首都を移転させました。しかし、彼の治世は17年しか続かず、結局は旧勢力によって亡き者にされてしまい、アケタトンの街は放棄されてしまいました。
アケタトン、現在アマルナからはアマルナ文書の名で知られる大量の粘土板が出土しており、古代エジプト研究がいっそう進むことになりました。この発見は19世紀終わり頃のことで、以降、アクナーテンの名前は一躍有名になりました。
本作品はアクナーテンの治世をオペラに仕立てた作品です。三幕からなり、第一幕は首都テーベで先王が崩御し、アクナーテンが戴冠する様子、第二幕は5年目から15年目までの最盛期、第三幕はアクナーテンが倒れる17年目と現代が描かれています。
この作品の初演は1984年3月24日、場所はドイツのシュトゥットガルトでした。その後もさまざまな場所で演じられており、特に2010年代に入ると、上演回数が増えています。2019年にはニューヨークのメトロポリタン・オペラでも上演され、人気を博しています。
本作品は1987年1月から3月にかけてスタジオで録音されています。キャストは概ね初演時と同じです。オーケストラはシュトゥットガルト州立歌劇場附属のオーケストラで、指揮は現代音楽を得意とする米国人デニス・ラッセル・デイヴィスとなっています。
歌手は全部で12人がクレジットされています。それぞれが古代エジプト風の衣装を身を包んでの歌唱です。歌詞は一部の例外を除き、アクナーテンの時代のエジプトや中東の言葉で書かれており、理解を補うために英語によるナレーションが組み込まれています。
それまで小ぶりのアンサンブルを中心に書いてきたグラスにとって、本作品は本格的にオーケストラを使った初めての作品でもあります。そして、特にコーラスとソロの声がオーケストラと共通の土俵をシェアするように書くことを心がけたのだそうです。
リズムがパルスとなって延々と流れていく手法はオーケストラであっても同様です。多くの楽器が同じパターンのリズムを反復していきます。全体で2時間を越える大作ですが、さまざまなパターンのミニマルなリズムはずっと流れて続けています。
サウンドだけでも十分感動的です。オーケストラ作品ではありますが、クラブ・ミュージックを聴いているようなそんな心持になってきます。オペラなのですから、スクリプトにも気を配りながら聴くのが正しいのかもしれませんが、私にはめくるめくサウンドだけで十分です。
Akhnaten / Philip Glass (1987 CBS)
アクナーテンは紀元前14世紀半ばに、父アメンホテプ3世を次いでファラオの座につきました。アクナーテンは王権をも越える力を持つに至った宗教勢力に果敢に戦いを挑み、アトン神を唯一神とする宗教改革を断行したことで有名です。
その一環としてアクナーテンはアケタトンに宗教都市を建設し、テーベから首都を移転させました。しかし、彼の治世は17年しか続かず、結局は旧勢力によって亡き者にされてしまい、アケタトンの街は放棄されてしまいました。
アケタトン、現在アマルナからはアマルナ文書の名で知られる大量の粘土板が出土しており、古代エジプト研究がいっそう進むことになりました。この発見は19世紀終わり頃のことで、以降、アクナーテンの名前は一躍有名になりました。
本作品はアクナーテンの治世をオペラに仕立てた作品です。三幕からなり、第一幕は首都テーベで先王が崩御し、アクナーテンが戴冠する様子、第二幕は5年目から15年目までの最盛期、第三幕はアクナーテンが倒れる17年目と現代が描かれています。
この作品の初演は1984年3月24日、場所はドイツのシュトゥットガルトでした。その後もさまざまな場所で演じられており、特に2010年代に入ると、上演回数が増えています。2019年にはニューヨークのメトロポリタン・オペラでも上演され、人気を博しています。
本作品は1987年1月から3月にかけてスタジオで録音されています。キャストは概ね初演時と同じです。オーケストラはシュトゥットガルト州立歌劇場附属のオーケストラで、指揮は現代音楽を得意とする米国人デニス・ラッセル・デイヴィスとなっています。
歌手は全部で12人がクレジットされています。それぞれが古代エジプト風の衣装を身を包んでの歌唱です。歌詞は一部の例外を除き、アクナーテンの時代のエジプトや中東の言葉で書かれており、理解を補うために英語によるナレーションが組み込まれています。
それまで小ぶりのアンサンブルを中心に書いてきたグラスにとって、本作品は本格的にオーケストラを使った初めての作品でもあります。そして、特にコーラスとソロの声がオーケストラと共通の土俵をシェアするように書くことを心がけたのだそうです。
リズムがパルスとなって延々と流れていく手法はオーケストラであっても同様です。多くの楽器が同じパターンのリズムを反復していきます。全体で2時間を越える大作ですが、さまざまなパターンのミニマルなリズムはずっと流れて続けています。
サウンドだけでも十分感動的です。オーケストラ作品ではありますが、クラブ・ミュージックを聴いているようなそんな心持になってきます。オペラなのですから、スクリプトにも気を配りながら聴くのが正しいのかもしれませんが、私にはめくるめくサウンドだけで十分です。
Akhnaten / Philip Glass (1987 CBS)