まさかのコラボ、御大ルー・リードとヘヴィ・メタルのスーパースター、メタリカによるダブル・アルバム「ルル」です。結果的にルー・リードの生前最後のスタジオ作品となってしまいました。彼らはさらに一緒に活動する予定があったそうですから大変残念なことです。

 きっかけは2009年のロックの殿堂25周年記念コンサートでルーとメタリカがそれぞれ演奏したことで、その後、両者は一緒にアルバムを作ろうという話が持ち上がったのだそうです。それが2年後に結実して、できあがったのがこの作品です。

 2枚組80分弱の大作です。ここにあるのはいつものルー・リードとメタリカで、なにか変わったことをしているわけではありません。両者それぞれが持ち味を発揮して作り上げた作品です。極めてストレートなサウンドですから、予想外ということはまるでありませんでした。

 ただし、当然のことながらメタリカのジェームス・ヘットフィールドはほんの少ししかボーカルをとっていません。もちろんメイン・ボーカルはルー・リードです。本作品はメタリカのファンにはすこぶる評判が悪いそうなのですが、それは恐らくはこのボーカルのせいでしょう。

 ルーのファンである私などは彼のポエトリー・リーディング・スタイルのボーカルには慣れていて、大変味わい深いと思うのですが、メタル・ファンにしてみれば、「ちゃんと歌えよ」と思うのでしょうか。ヘヴィ・メタルのボーカルは音程がしっかりしていますからね。

 本作品のテーマ「ルル」はドイツ表現主義の先駆者と言われるフランク・ヴェーデキントの戯曲「地霊」と「パンドラの箱」を原作とするアルバン・ベルクのオペラ作品で知られます。貧民窟から出た魔性の女ルルが切り裂きジャックに殺されるまでの波乱の人生を描いた作品です。

 ルーが書き溜めていた「ルル」のための楽曲デモをメタリカの面々に提示して、セッションを通じて仕上げていったのがこの作品です。メタリカは事前に考えていたことは何もないと言い切っており、まさにジャム・セッションを通じて曲が完成していった模様です。

 ルー・リードという人は本当はこういう作品を作りたかったのだなあ、と長年のファンとしてはしみじみと思ってしまいます。テーマはかの傑作「ベルリン」に通じるものがあり、演奏は研ぎ澄まされたハード・エッジなもの。ルーのボーカルにも力が入るというものです。

 ルーの長年のライバル、デヴィッド・ボウイはルーのパートナーであるローリー・アンダーソンに対して、この作品はルーの最高傑作で、理解されるには時間がかかるが「ベルリン」のようになるだろう、と伝えたそうです。ルーのファンは概ねそちらの評価ではないでしょうか。

 メタリカにしてみても、決してルーに引っ張られすぎているわけではなく、いつもよりは隙間が多いとはいえ、メタリカらしさは十分に発揮されているように思います。メンバーもセッションにはそこそこ満足している様子ですし、このコラボは大成功だったと思います。

 ルーの遺作となってしまったことは返す返すも残念です。オールド・ファンとしてはこのコラボでヴェルヴェット・アンダーグラウンドを含むルーの名曲の数々を演奏するのを聴いてみたかったです。ライヴで演奏した「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」はかっこいいですから。

Lulu / Lou Reed & Metallica (2011 Vertigo)