待望のリーガルリリーの新作です。今度はメジャー初EPだということで、何でも初を付けたがるレコード会社の思惑に苦笑してしまいました。全4曲、全部で15分弱ですから、まあEPというしかないのも分かります。ミニアルバムの方が座りがいいですけど。

 ジャケットは銀杏boyzとの仕事などで知られるデザイナーの坂脇慶が手掛けています。画面を二分割して上半分が昼、下半分が夜になっていて、収録曲の「天国」と「地獄」にも響き合います。彼女たちの三部作ポスト、テレフォン、ラジオが描かれているのもいいです。

 EPはのタイトルは「ザ・ワールド」で、「この世界と生きること」という副題がつけられています。収録曲は「東京」、「地獄」、「天国」、「天使と悪魔」の4曲です。最後の「天使と悪魔」は彼女たちが敬愛するバンドSEKAI NO OWARIのカバーです。

 さらに初回限定盤を買いましたので、2020年12月10日にZEPP東京で行われたライヴのDVDが添付されています。こちらは「リッケンバッカー」や「はしるこども」などの代表曲9曲を収録したものになっており、新EPの曲は含まれていません。

 たかはしほのかは本作品の発表にあたって「昨年は、皆さんと同じように私たちの周りにも様々なことが起きました。そんな中で作り始めた曲たちを、ようやく届けることが出来て嬉しいです」と挨拶しています。コロナ禍を経験したという一点で分かり合える発言です。

 そうして出来上がった曲が「東京」、「地獄」、「天国」ですから、これまたとても素直に分かりやすいです。歌詞の内容はともかく題名だけで多くの人の共感を得るに十分です。思えば自宅軟禁状態は地獄と天国を行ったり来たりするものですからね。

 ここでのサウンドはこれまでのリーガルリリーに比べてもライブ感が強烈な気がします。なかなかバンドが一緒に演奏することが難しいご時世だけに、セッションのありがたみは半端ないものがあったのでしょう。スタジオ・ライヴのノリが感じられます。

 ボーナス・ディスクのライヴもちょうどコロナ禍の狭間でした。久しぶりにライヴを行う喜びが感じられるステージです。それからわずか半年でまだ先が見えない状況になろうとは当時は誰も思っていなかったでしょう。まさに天国と地獄です。

 リーガルリリーはこのEPを携えて全国ツアーに出ています。延期やら時間変更やらいろいろな困難を抱えながらも、何とかやり遂げたところが素晴らしい。コロナに打ち勝った証しとしてのライヴです。エンタメは死なず、何やらとても嬉しい話です。

 サウンドはいつものリーガルリリーがさらにふっ切れたように輝いています。シンプルなロック・トリオが轟音を響かせながらもゆったりした歌を聴かせるスタイルはますます磨きがかかり、短い分、勢いが凄いことになっています。

 「天使と悪魔」はたかはしの邦楽への入り口となった曲だそうです。「生まれて初めて自分のお金で買ったCD」に収録されていた曲は、「地獄」と「天国」に素直に同居しています。パーソナルな感じがまたこのEPらしい。あいかわらず我が道をいくリーガルリリーです。

The World / Regal Lily (2021 Ki/oon)