女王蜂のメジャー・デビュー第5作「十」です。前作「Q」で人気を確かなものとした女王蜂が大ブレイクを果たした作品です。オリコン・チャートでは5位とついにトップ10入りするヒットになりました。押しも押されもせぬメジャーぶりです。

 アルバム発表の1年前、2018年4月には本作収録の「HALF」をテレビアニメ「東京喰種:re」のエンディングテーマとしてリリースすると、続いて「催眠術」、「火炎」と順調にリリースを重ね、本作の発表となりました。さすがはソニー、プロモーションがしっかりしています。

 「火炎」もテレビアニメ「どろろ」のオープニングテーマとなり、さらに本作収録の「聖戦」は映画「貞子」の主題歌に、「イントロダクション」が映画「東京喰種【S】」の主題歌にとタイアップが続きます。シングル盤の発売も特典満載で凄いことになっていました。

 アルバムももちろん豪華な仕様が同時に発表されています。初回生産限定盤はCDにDVDと84ページに及ぶブックレット、特製ステッカーシートと超豪華仕様です。DVDには女王蜂主催対バン企画による新木場のスタジオでのライヴが収録されています。

 アヴちゃんを中心とする4人組はヴィジュアル面でも個性を発揮しています。本名・年齢・性別・国籍などは一切公表せず、それを逆手にとったとも思える耽美な世界を現出させています。これは84ページのブックレットも必要だなと思います。

 女王蜂の曲のタイアップは並べてみると、見事にホラー系というかダーク・ファンタジーなものばかりです。懐かしい「どろろ」やジャパニーズ・ホラーの代表格「貞子」、山本舞香のアクションがかっこよかった「東京喰種【S】」などなど。女王蜂のイメージなんでしょうね。

 確かに女王蜂のセルフ・プロデュースは異世界ないしはホラー的なイメージを強調したものですから、こうした映像作品との相性は良いのだろうと思います。しかし、女王蜂のサウンドがホラー系というわけではありません。この頃は「ディスコ歌謡」の方がしっくりきます。

 節回しが和の世界です。「先生」では♪むすんでひらいて♪の旋律をそのまま使っていますけれども、それが特に違和感があるわけではありません。昭和歌謡や祭りばやしを思わせるメロディーが女王蜂ワールドの大きな要素になっています。

 そしてベースとなるサウンドはテクノ調であったりもしますが、ここでは意外にニルヴァーナ的なロックの要素が強いです。「超・催眠術」のギター・ソロなんてまさにそんな感じです。ハード・ロックは和ものメロディーともともと相性が良いです。

 そんなサウンドに乗せて、男声と女声を使い分けるアヴちゃんのボーカルが女王蜂ワールドを展開していきます。歌詞ははっきりと聴きとれるように歌われており、私小説的に心情を吐露していく姿はとても純粋でその重みが美しいです。

 特異な世界の衣装をまとってはいますが、ここに展開する女王蜂ワールドは真摯なものです。軟弱になってしまう前の過日のフォークの世界とも共通するものを感じます。女王蜂のサウンドは多くの若者を救っていることと思います。いいアルバムです。

Juu / Queen Bee (2019 ソニー)