フランシスコ・モラ・キャトレットの幻のアルバムです。モラは自主レーベルから1986年に「モラ!」というアルバムを残しました。この作品はその続編として録音されていたものですが、2021年になってようやく陽の目をみることができました。

 より正確には2005年に「リバー・ドラム」という形でリリースされていましたが、同作品はこの作品を含むコンピレーションで、当初意図した形でのリリースではなかったようです。ジャケットからして分かる通り、当初の意図はあくまで「モラ!」の続編でした。

 2005年にモラのコンピレーションが出されたことには意味がありそうです。モラはサン・ラーのアーケストラに参加していたことで有名ですが、この時代にはクラブ・ミュージックの世界にも進出して活躍していました。そこが彼の柔軟性を感じるところです。

 私のCDコレクションの中でいえば1999年のインナーゾーン・オーケストラが彼のドラムをフィーチャーしたものです。デトロイト・テクノ第二世代のカール・クレイグが結成したグループによるクラブ・ミュージックの名作で、モラは素敵なドラムを聴かせてくれます。

 そういえばモラはサン・ラーと共演した後はデトロイトに移住しており、そこで短命に終わったものの評価の高いストラタ・レコードを創始したケニー・コックスらと知り合って活動の輪を広げていきます。それがカール・クレイグまでつながるところがいいです。

 デトロイトで、モラはコックスらとともに名盤「モラ!」を自主レーベルに録音しています。本作品はその続編として企画され、ほぼ同じメンバーにて録音された作品です。ただし、今回はストリングスを起用した曲もあります。題して「モラ!II」です。

 ストリングスを起用した曲は「アマゾナ・プレリュード『ドーン』」です。このプレリュードに導かれて始まるのが「アマゾナ」で、モラの奥さんでもあるテレ―サ・モナのボーカルを起用した見事なジャズ・サンバです。♪アマゾン、アマゾン♪連呼するところがたまりません。

 「アマゾナ」に続くのはその名もずばり「サンバ『コンガ・ド・アモール』」です。この並びはラテンの風合いが極めて強く、モラの力強いドラムをバックにスティールパンやブラスが乱舞するラテン・ジャズが堪能できます。「モラ!」よりもラテンに寄っています。

 本作では前作でもあたかもアルバムのテーマのように坐っていた「アフラ・ジャム」の別バージョンを最初と最後に置いて他の曲を挟みこんでいます。これも前作とはかなり異なる雰囲気で、よりフリーな雰囲気が漂います。サン・ラー的とする人もいます。

 フランシスコ・モラにスピリチュアルを見る人は「エル・モロ」のムードに惹かれるのではないでしょうか。アマゾンの密林に蠢く精霊を感じることができる湿気の多い演奏です。総じて「モラ!」と遜色ない隠れた名盤であると思います。楽しいし。

 それなのになぜお蔵入りになったのかは謎です。前作が自主レーベルからの発表だったわけですから、これもほいっと出せばよかったのに。いずれにせよ、音源さえ残しておけば、こうして必ず陽の目をみるんです。散逸しなくて本当に良かったと思います。

Mora! II / Francisco Mora (2021 Far Out)