アメリカはデビュー作がいきなり全米1位に輝いたものですから、自信作だったであろうサード・アルバムが28位どまりだったことに大きく失望したようです。普通に考えれば成功の部類でも下降ベクトルは耐え難いものなんでしょう。

 それから8ヶ月、アメリカは見違えるような作品とともに再登場しました。それがこの四枚目のアルバム「ホリデイ」です。まずはジャケットが違います。ジャケットのセンスのなさが個性のうちだったアメリカなのに、いきなりレトロ調のお洒落なジャケットが登場しました。

 サウンドの方も見違えるようです。彼らは行き詰まりの原因がセルフ・プロデュースであると感じたのか、本作品のプロデュースをあろうことかジョージ・マーティンに頼みました。エンジニアはジェフ・エメリック、いずれもビートルズのサウンドを作り上げた人です。

 毎回書いていますが、アメリカの三人は「サージェント・ペパーズ」のようなアルバムを目指していました。そんな彼らですからビートルズはもちろん憧れの的に違いなく、マーティンがプロデュースを引き受けてくれた時には狂喜乱舞したことでしょう。

 ロンドンのエア・スタジオに飛んだアメリカはわずか3週間ほどでこのアルバムを仕上げています。彼らはもともとロンドンで結成されていますが、拠点をロスアンゼルスに移していますから、もはやロンドンはアウェーです。その結果、参加ミュージシャンががらりと変わりました。

 もともとダン・ピーク、ジェリー・ベックリー、デューイ・バネルの三人がギターとボーカルをとるトリオで、リズム・セクションなどは外部ミュージシャンを使っていましたが、ここではジェリーとダンがベース、ドラムには四人目のアメリカといえるウィリー・リーコックスが起用されました。

 さわやかアコースティック・ギター・トリオのイメージはかなり薄らいで、普通のロック・バンドに近くなりました。さらにここにマーティンによるストリングスとブラスが加わっているため、コーラスは変わらないもののこれまでの3作とは大きくそのサウンドが変化しています。

 最初のインストゥルメンタルの小曲「ミニチュア」を聴いたとたんにビートルズを思い浮かべます。いかにもジョージ・マーティンなサウンドになっています。まるで別のバンドですけれども、三人それぞれの作曲能力はやはり高いので、やはりアメリカはアメリカなのでした。

 アルバムからは最初のシングル「ティン・マン」が全米4位、続く「ロンリー・ピープル」が5位と大ヒットを記録します。それぞれデューイ、ダンの曲です。いずれもアダルト・コンテンポラリー・チャートでは1位を記録しています。

 それにつれてアルバムも全米3位の大ヒットになりました。起死回生のヒットです。しかし、あまりにビートルズ的に手堅くまとめられたアルバムはプラチナ・ステータスは得られませんでした。出来過ぎたアルバムというのは難しいものです。

 ジャケットの感じがギルバート・オサリバンっぽいなと思ったんですが、アルバム中のジェリーの曲はオサリバンに少し似ていることを発見しました。1970年代前半ならではのサウンドです。まだまだビートルズの余波が世界を覆っていた時代でした。

Holiday / America (1974 Waner Bros.)