ロンドンで結成されたアメリカはデビュー作のアメリカでの大成功を受けて、北米ツアーに出ました。そこで考えるところがあったのでしょう、デビューの立役者たるプロデューサーのイアン・サムウェルとジェフ・デクスターのコンビから独立しました。

 サージェント・ペパーズ的なアルバムを作ろうとしていたトリオに対し、さわやかギター・トリオ路線を推奨して大成功に導いた二人にしてみれば、この独立はたまったものじゃなかったでしょうが、芸能界にはこういうことが往々にしてあります。大変です。

 ともあれ、自立したアメリカはロスアンゼルスに拠点を移して活動を開始します。アルバムの制作はダン・ピークの腕の怪我などもあって遅れがちでしたが、セルフ・プロデュースのセカンド・アルバムは1972年9月に発表されました。

 本作品ではピーク、ジェリー・ベックリー、デューイ・パネルの三人に加え、ロサンゼルスの超一流セッション・ミュージシャンのハル・ブレインとジョー・オズボーンの強力リズム隊が全面的に参加しています。その点がまずは前作との大きな違いです。

 エレキギターも多用されていますし、ピークとベックリーのキーボードも大活躍しています。そう考えてみると、さわやかハーモニーのフォーク・ロック路線はこのトリオの意に添わなかったのかもしれません。デビュー作も屈託に満ちたものでしたし。

 ところがアルバムの冒頭には、一般的なアメリカ像にぴったりと寄り添う名曲「ヴェンチュラ・ハイウェイ」が登場します。シングル・カットされたこの曲は全米8位にまで上昇する大ヒットとなり、アメリカを代表する曲になりました。ボーカル・ハーモニーが素敵です。

 大ブレイクした「名前のない馬」よりも「ヴェンチュラ・ハイウェイ」の方がアメリカ的であるのが面白いです。ロンドンからロスアンゼルスに拠点を移して、本来のヤンキー魂を取り戻したのかもしれません。やはりイギリスとアメリカの間にはカルチャーギャップがあります。

 その後の展開はエレキ・ギターやキーボードが活躍する普通のロック仕様になってきています。しかし、ボーカル・ハーモニーは健在ですし、アコギを忘れたわけではありません。その塩梅もなかなかいいです。何だか素直になった気がします。

 やはり異国の地で肩肘を張っていたのではないでしょうか。アルバム・タイトルの「ホームカミング」がとても似合うサウンドです。あれこれ考えずに素直に自分たちの長所を生かしながらやりたいことをやっている感じがいいです。やはり家に帰って落ち着いたのでしょう。

 オズボーンとブレインのリズム隊はこういう時には本当にいい仕事をします。アメリカのサウンドに一本筋を通しており、まだ若いトリオをしっかり支えて味わいのあるリズムを醸しています。これもホームカミングならではの効果でしょう。

 アルバムは残念ながら全米1位とはなりませんでしたが、トップ10入りはしており、プラチナ・ディスクに輝いています。CSN&Yと比べられることも多かったアメリカですが、彼らほど灰汁が強くないところが彼らの持ち味です。より身近に感じられる若者たちです。

Homecoming / America (1972 Warner Bros.)