「イース」は私が初めて買ったPCゲームです。面白そうだと思って買ったのですが、当時私が持っていたモノクロ画面のラップトップPCではまるで意味をなさず、ほどなくして売却してしまいました。バカでした。いつの日かリベンジを誓ったものの、まだ果たせていません。

 ゲームミュージックは今や音楽の一大ジャンルとなり、親和性が低いと思われるCDメディアなどでも多くの作品が出されています。ヴェイパーウェイヴのアーティストを始めとする多くのアーティストに多大な影響を与えているということで、私も音楽でリベンジしてみました。

 この作品は2009年に発表されたもので、「イースI&II」をリメイクした「クロニクルズ」という作品のオリジナル・サウンドトラックです。「イースサウンドの原点全55曲を完全新録新アレンジ!!」しており、曲自体はオリジナルの「イース」のものです。

 30年以上にわたって続くイース・シリーズの原点となる第一作「イース」は1987年の発表です。この時のサウンドはPC内蔵のFM音源を使用していました。大たいゲームも今では完全に忘れさられたフロッピーディスクで売られていた頃の話です。

 「クロニクルズ」では新録新アレンジ音源の他に、このオリジナルのFM音源と2001年にリメイクされた際の音源を選択できるようになっているそうです。何とも丁寧な作りです。ただし、このサントラにはもちろん新録新アレンジ音源のみが収録されています。

 オリジナルを作ったのは日本を代表するゲーム音楽作曲家の古代祐三や、後にファルコムの音楽事業全般を統括することになる石川美恵子などのファルコム社のサウンド・スタッフです。同社のサウンド・スタッフは後にファルコム・サウンド・チームjdkと名乗ります。

 本作品のサウンドもファルコム・サウンド・チームjdkが作っています。ただしアレンジを手掛けているのは社外メンバーである神藤ユキヒロです。楽器の担当者もクレジットされていますが、必ずしもファルコム社員というわけではなさそうです。

 ゲーム音楽というと初期の頃のいかにもコンピューターというプリミティブなサウンドを想起してしいまいます。あれはあれで大変趣きがありました。「イース」のオリジナルなどは限られた音を使って見事な世界を描き出しています。

 それに比べると新録新アレンジはもはや普通の音楽と何ら変わりません。原曲の素晴らしさを引き出す豪華なサウンドに変化しています。エレクトロニクスばかりではなく生楽器も使った全55曲はハードなりシンフォニックなりいずれにせよプログレに近いサウンドです。

 映画のサントラとは異なり、間を活かすというよりも、とにかく音で埋め尽くすことが優先されており、濃密に音が詰まっています。しかもキャッチーなフレーズが多く、耳に残ります。何度も何度も聴かれることを意識したサウンド作りです。

 逆にそれが面倒でゲームをする時にはたいていBGMを切ってしまうのですが、こうして改めて音楽作品として鑑賞してみると、その豊かなサウンド世界に感動してしまいました。「イース」の世界観を切り離しても十分に楽しい作品でした。

Ys I&II Chronicles / Falcom Sound Team jdk (2009 Falcom)