ちょうど私が洋楽を聴き始めて、ラジオのビルボード・ヒット・チャート番組を聴くようになった頃、チャーリー・リッチの「朝やけの少女」」が全米1位に輝いていました。テリー・ジャックスの「そよ風のシーズン」がその少し後、この2曲はそのせいでとても強く印象に残っています。

 そんな事情ですから、チャーリー・リッチがどのようなアーティストかも全く知らず、私の中では全米1位に輝いた人という認識でした。しかし、その後、彼の活躍を耳にする機会はとんとありませんでした。あれから50年近くたって、久々の再訪です。

 「朝やけの少女」という邦題ですけれども、原題は「ザ・モースト・ビューティフル・ガール」です。タイトルが歌の中で効果的に使われていて、とても強力なものですから、邦題よりも原題の方がずっと馴染みがあります。さすがに全米1位楽曲です。

 「ビハインド・クローズド・ドアー」はチャーリー・リッチの最大のヒットアルバムです。米国のカントリー・チャートで1位を獲得したばかりか、メイン・チャートの方でも8位となる大ヒットで、米国では400万枚を売り上げた他、カナダでも大きなヒットになっています。

 リッチは1932年生まれですから、このアルバムを発表した時には40歳を越えています。20代半ばでサン・レコードのセッション・ミュージシャンとなったリッチは、エルビスのような歌い方で1960年にはシングル・ヒットを飛ばしています。
 
 その後、レーベルを転々としつつ、シングルをヒットさせても後が続かないという状況を続けることとなります。その間、音楽のスタイルもさまざまに変化していたようです。彼に手を差し伸べたのはカントリー系のプロデューサー、ビリー・シェリルでした。

 シェリルによってカントリー歌手として自らのスタイルを確立したリッチは、アルバムに先行するシングル「アイ・テイク・イット・オン・ホーム」をカントリー・チャートにてトップ10に入るヒットにしました。このアルバムはそんな上り調子の時期に発表された作品です。

 アルバムのタイトル曲はついにカントリー・チャートを制し、さらに「朝やけの少女」がカントリー・チャートばかりかメイン・チャートも押さえたわけですから大成功です。リッチの名前は一躍全米のみならず世界にとどろきました。

 さらにカントリー・ミュージック協会のCMAアワードでアルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞、グラミー賞でもベスト・カントリー・ボーカル賞を受賞しました。カントリー・ミュージックにはアメリカの賞レースがとてもよく似合います。リッチの苦労が報われましたね。

 「朝やけの少女」はとてもリズミカルなポップ・ソングで、低音を効かせたリッチの豊かなボーカルが冴える名曲です。プロデューサーのシェリルが作曲に加わった楽曲で、スティール・ギターが効果的に使われてドラマチックです。

 エルビス的ロックンロールやブルー・アイド・ソウルなど、これまでにリッチが経てきた経歴が土台となって、しっかりとカントリー・スタイルが確立されており、今でも昔聴いた時と寸分たがわない印象を受けます。さすがにカントリーはしぶといです。

Behind Closed Door / Charlie Rich (1973 Epic)