ベイ・シティ・ローラーズは解散してからも根強い人気を誇っています。このベスト・アルバムは1989年の発表で、この当時、日本では自動車のCMに「サタデイ・ナイト」が使われて、ちょっとした再ブームが訪れていました。タイミングのよい発売です。

 彼らの人気は日本から火が着いたように誤解されがちですが、そんなことはありません。彼らのレコード・デビューは1971年のことで、早くもデビュー曲「朝まで踊ろう」が全英トップ10ヒットとなっています。そして1974年の「想い出に口づけ」以降は英国でヒット連発です。

 しかも、その英国でティーネイジャーが彼らに殺到して失神騒ぎが起きるほどだったといいます。その噂が日本に伝わってきたところで、大ブレイク作「バイバイ・ベイビー」の大ヒットが生まれ、一気に日本のみならず世界中に彼らの名前がとどろきました。

 その後、ローラーズの人気は「サタデイ・ナイト」の全米制覇を筆頭に1977年の頭くらいまで大変な勢いがありました。ローラー・ハリケーン、タータン・ハリケーンと言われた通り、その瞬間風速は大変なものがあり、2年あまりで今に続く爪痕を残していきました。

 ローラーズはその後度重なるメンバー・チェンジに代表される迷走を続けることとなり、結局1981年に解散してしまいます。しかし、解散直後からリユニオン・ツアーを繰り返し行うようになり、再結成もあり、分裂ツアーもありと、今に至るも余韻が残る状況です。

 このベスト盤は彼らの2枚目のヒット曲「想い出に口づけ」以降の主要曲を網羅したまさにベスト盤中のベスト盤です。特にレスリー・マッコーエン時代の曲はしっかり拾っています。後任のダンカン・フォールの曲は全21曲中「恋するラジオ」のみです。

 ダンカンも悪くはないのですが、やはりローラーズはレスリーのボーカルが大黒柱でした。「バイバイ・ベイビー」を聴いた時の衝撃は忘れません。オリジナルはフォー・シーズンズですが、ローラーズによるカバーの時代を超えたポップ魂は凄いです。

 この曲に限らず、全21曲が臆面もなく見事にポップしています。そのせいでほとんどの曲が頭の中に残っています。演奏できないとか、本物のロックでないとか、いろいろと言われていたローラーズですが、彼らの楽曲は永遠の命を獲得しているのでした。凄いことです。

 イギリスではシングル発売されていないのに米国1位となった「サタデイ・ナイト」や、「二人だけのデート」を始め、ダンカンの「恋するラジオ」までひたすらポップです。一方、「イエスタデイズ・ヒーロー」など自我に目覚めたような曲もあり、正しく屈折もしています。

 残念なのはこの当時はまだカラオケが普及していなかったことです。ローラーズの曲はカラオケに映えます。カラオケが一般的だったとしたら、ローラーズ歌いたさに英語を勉強した中高生も多かったのではないでしょうか。気持ちいいですからね。

 レスリーはジョン・ライドンと3か月しか歳の差がありません。同じ時代を生きた二人、時代のアイコンとなったバンドのレガシーを背負い続ける二人です。まるで住む世界が違いそうですけれども、しょせんは同じロック界のことです。出会いはあったのでしょうかね。合掌。

Memorial / Bay City Rollers (1989 Arista)