マイルス・デイヴィスの新しいクインテットは「セヴン・ステップ・トゥ・ヘヴン」の半分を録り終えた後、アメリカで2,3週間のツアーを行ってお披露目を済ませると、ヨーロッパにわたって、フランスのジャズ・フェスティヴァルに参加します。
時は1963年7月27日、場所はフランスの地中海側、ニースにほど近いアンティーヴです。このライヴの模様はフランス国営ラジオが録音しており、それを編集したのがこのアルバム、「イン・ヨーロッパ」です。CD1枚に80分が凝縮されています。
もちろん当時はLP形態で発表されています。残念ながら2枚組にはならず、それでもできるだけのことをしようと、LPの限界近い60分強の収録時間となっています。そのため、全6曲中3曲ではサックスやピアノのソロが一部カットされてしまいました。
CDではカットされた部分が戻り、さらに1曲「アイ・ソート・アバウト・ユー」が収録されました。しかし、残念ながらCDも2枚組とはならず、「バイバイ・ブラックバード」と「テーマ」の2曲が収録されませんでした。結果的に中途半端な長さだったのが災いしました。
アルバムはフェスティヴァルっぽく、MCによる紹介から始まります。フランス語なので、Hを発音しないため、♪エルビー・アンコク♪と紹介されているのはハービー・ハンコックです。一瞬違う人かと思いました。フランス人は頑固ですね。
この紹介の中でもドラムのトニー・ウィリアムスは17歳だと紹介されています。ここは誰もが驚くポイントです。そのトニーは「奴のことを知らなかった連中の度肝を抜き、ジャズの出来事ならなんでも知っているという、フランス人のプライドまで吹き飛ばして」しまいました。
マイルスは「オレ達は、そこでもみんなをまいらせた」と至極ご満悦です。「トニーはメンバー全員を、やたら燃え上がらせるんだ」ということで、関節に痛みを抱えていたマイルスもそれを忘れるくらい「演奏に熱中させられた」と語っています。「本当にトニーは最高だった」。
確かにトニーのドラムは凄いです。LPのジャケ裏に書いてある解説の表現を借りると、マイルスが演奏している時のシンバルさばきはまるでマイルスと一緒におしゃべりしているかのようですし、リズム隊だけの時には自在に波乗りをしているようです。
さらにサックスのジョージ・コールマンもトニーに煽られていつもとは違うプレイをしています。ベースのロン・カーターやピアノのハービー・ハンコックとの緊密なインタープレイは言わずもがな、まさにトニーが中心にいるクインテットです。恐るべき17歳。
そして、昔の曲「マイルストーンズ」を「もう一度オレにステージでやらせたのも、トニー」でした。しばらく低迷していたマイルスはトニーのおかげで完全復活です。とても楽しそうな生き生きとした演奏が繰り広げられるいいアルバムです。
なお、オリジナルはモノラル録音です。それがまたポイントが高い。この頃の録音はモノラルの方が臨場感があります。スピード感あふれるストレートな演奏にはモノラルの硬質な感じがよく似合います。ジャズらしいジャズだと思います。
In Europe / Miles Davis (1964 Columbia)
時は1963年7月27日、場所はフランスの地中海側、ニースにほど近いアンティーヴです。このライヴの模様はフランス国営ラジオが録音しており、それを編集したのがこのアルバム、「イン・ヨーロッパ」です。CD1枚に80分が凝縮されています。
もちろん当時はLP形態で発表されています。残念ながら2枚組にはならず、それでもできるだけのことをしようと、LPの限界近い60分強の収録時間となっています。そのため、全6曲中3曲ではサックスやピアノのソロが一部カットされてしまいました。
CDではカットされた部分が戻り、さらに1曲「アイ・ソート・アバウト・ユー」が収録されました。しかし、残念ながらCDも2枚組とはならず、「バイバイ・ブラックバード」と「テーマ」の2曲が収録されませんでした。結果的に中途半端な長さだったのが災いしました。
アルバムはフェスティヴァルっぽく、MCによる紹介から始まります。フランス語なので、Hを発音しないため、♪エルビー・アンコク♪と紹介されているのはハービー・ハンコックです。一瞬違う人かと思いました。フランス人は頑固ですね。
この紹介の中でもドラムのトニー・ウィリアムスは17歳だと紹介されています。ここは誰もが驚くポイントです。そのトニーは「奴のことを知らなかった連中の度肝を抜き、ジャズの出来事ならなんでも知っているという、フランス人のプライドまで吹き飛ばして」しまいました。
マイルスは「オレ達は、そこでもみんなをまいらせた」と至極ご満悦です。「トニーはメンバー全員を、やたら燃え上がらせるんだ」ということで、関節に痛みを抱えていたマイルスもそれを忘れるくらい「演奏に熱中させられた」と語っています。「本当にトニーは最高だった」。
確かにトニーのドラムは凄いです。LPのジャケ裏に書いてある解説の表現を借りると、マイルスが演奏している時のシンバルさばきはまるでマイルスと一緒におしゃべりしているかのようですし、リズム隊だけの時には自在に波乗りをしているようです。
さらにサックスのジョージ・コールマンもトニーに煽られていつもとは違うプレイをしています。ベースのロン・カーターやピアノのハービー・ハンコックとの緊密なインタープレイは言わずもがな、まさにトニーが中心にいるクインテットです。恐るべき17歳。
そして、昔の曲「マイルストーンズ」を「もう一度オレにステージでやらせたのも、トニー」でした。しばらく低迷していたマイルスはトニーのおかげで完全復活です。とても楽しそうな生き生きとした演奏が繰り広げられるいいアルバムです。
なお、オリジナルはモノラル録音です。それがまたポイントが高い。この頃の録音はモノラルの方が臨場感があります。スピード感あふれるストレートな演奏にはモノラルの硬質な感じがよく似合います。ジャズらしいジャズだと思います。
In Europe / Miles Davis (1964 Columbia)